青頭巾

雨月物語』の中に「青頭巾」という物語がある。主人公は快庵禅師。美濃国竜泰寺
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で夏行(げぎょう)を終えて雲水の旅に出る。その途中に下野の富田(現足利市)に立ち寄るところから事件が起きる。快庵がとある屋敷で宿をこうと、大騒ぎになるのである。それはかつて、里山にあった寺の稚児が死んだ。住職はめっぽう可愛がっていたので、その悲しみのあまり発狂してしまう。その後、狂った住職が里人を襲うようになった。屋敷の人は、快庵とその住職を見間違えたのである。
 発狂の前後を原文で。
《終に心神みだれ、生きてありし日に違わず戯れつつも。その肉の腐り爛るるを吝しみて、肉を吸ひ骨を嘗めて、はた喫らいつくしぬ。》
 そんなことをしていてついに住職は鬼になってしまった。稚児への強い執着が鬼畜の道に堕ちるもとになったのである。
 鬼と変じた住職は快庵禅師の導きにより成仏するのだが、あな恐ろしきは執着かな。