フランス駐在特別編集委員マロニエ

 マロニエ冨永と呼んでいるが、相変わらずおフランスにお住いの朝日新聞特別編集委員様の文章は笑える。時おり何かを「日曜に想う」ては文章にしておられるが、よくもまあこんな恥ずかしい文章を堂々と書くものだ。今日の冒頭はこうである。
《地中海のヘソにあたるマルタ島の空と海は、白と黒ほどに別の青だった。》
文章は色彩も描くことができる。だがのっけに「白と黒」を出してしまえば、読者のイメージが白と黒にとらわれてしまう。「白と黒ほどに別の青」と言われても、白のような青、黒のような青が想像しにくいと思うんですけど。
《島は北アフリカチュニスやアルジェより南にあり、高くまっすぐな陽光が色という色を隔ててしまう。》
 う〜ん、非才なワシャにはよく理解できない。緯度的にはチュニスやアルジェより南にあるのだが、この書き方だと、チュニスやアルジェの南方にマルタ島があるような印象をうけてしまう。不親切な記述と言っていい。実はアルジェの1000キロも東にあるんですよ。それに北緯35度のちょっと上くらいだから、「高くまっすぐな陽光」と言ったって、逗子や茅ヶ崎程度のことである。この時期は、茅ヶ崎だって高くまっすぐな陽光」は射していますからね、まぁそんなものか、ということですわ。
 問題はその陽光が「色と色を隔ててしまう」という記載だ。強い光が色と色を隔てる……どういうことなんだろう。この文章を読んだだけでは、ワシャにはピンとこない。時たま、というかいつもこの特別編集委員の文章は、くどくもったいをつけている。その上、説明の足りないおかしな文章をチンを開するように開陳する(笑)。自分の文章によほどの自信があるというか溺れている。
 この後《白い光が照り返る英国人墓地に、》と書く。英国人墓地と言っているのでシーンとしてはロングですね。光が白くなっているので露出オーバーという状況だろう。そのシーンに連続して《漢字を刻んだ碑が立つ。》とくる。碑に刻まれた文字を「漢字」であると特定するためにはかなり近くまで接近しなければ絵に映りこまない。それも露出オーバーでの状態でである。このカメラの切り替えには無理がある。8mm映画を撮り始めたばかりの高校生じゃないんだから、こんなカット割りは止めようよ。
 マロニエ冨永は、英国人墓地にひっそりと並んでいる日本人の碑に参るわけなのだが、実際に行ったかどうかも疑わしいくらいに、いい加減な矛盾だらけの記述を羅列する。まずマロニエの文章を見てみよう。
《袋入りの切り餅が供えてあった。》まぁそういうこともあるだろう。そしてこう続ける。《私がふりかけた吟醸酒は風に舞い、金の粒になって合掌する間に消えた。》
 碑というと、ワシャなんかはどうしても大きな平面のものをイメージしてしまう。だが、それだと「ふりかける」ことができない。おそらく「ひっかける」ようになってしまう。まいいや、小さな墓石のような碑があったんでしょう。それにマロニエは日本酒を供養のために注いだんでしょう。さぁ注いだ。酒は碑にしみ込んでいく。あるいは一部の酒が風に流れていったのかもしれない。マロニエは今の状態で手に酒の瓶を持っている。この状態で合掌はできないから、瓶を置く。そしておもむろに姿勢をただし英霊に対して合掌するのである。おいおい、まだ風に舞った吟醸酒の粒が空中を浮揚しているんかい!本人は南ヨーロッパの風景を描きだそうとしたのかもしれないが、これではオカルト映画になってしまう。それにずっと白、白と言ってきたのに、ここになって吟醸酒の粒は金色になってしまう。せめて銀色にしておいてよ。まったく前後の脈絡を考えずにぶつぶつに切れた文章をつくる人なんですね。
 プロローグがこんなんなんで、本文も推して知るべし。お暇な方は朝日新聞でご覧ください。