国際メディア情報戦

 今度の読書会の課題図書は、高木徹『国際メディア情報戦』(講談社現代新書)である。読み終わって、内容は今一つかなぁ。すでに語られてきたことが多いし、今さらミロシェビッチ東京五輪誘致でもなかろう。講談社のPR雑誌の「本」に2012年から連載されていたものなので、ネタがやや古い。
 著者は言う。
《二〇一三年七月。オバマ大統領は新任の駐日大使として、故ケネディ大統領の娘、キャロライン・ケネディ氏を任命した。彼女は外交や政治の経験はほとんどない。そのキャロラインさんがなぜ選ばれたのか、ここまで本書を読んだ方にはもうわかるだろう。》
 この上から目線はどうであろう。そんなもの多くの日本人が「本書」を読まなくたって理解しているし、新聞・テレビで識者たちがそう言っている。
《私はテレビの専門家なのでそれほど本書では扱わなかったが、インターネットの世界でも同じことだ。ネットであれば、情報はダイレクトに届き、そこに余計な意志が入る余地はないともしあなたが思っているのであれば、甘すぎる。》
 そんなことは多くの人間は知っているわさ。日本人は加工されていると思いながらも、プロレスや大相撲を大らかに楽しんできた。多くの日本人が「甘すぎる」と思う高木氏が甘すぎる。
《ネット上のどんな情報も画像も映像も、かならず誰かの手を介してそこにある。そうであれば、そこに影響力を施そうと考える人や組織は必ず出てくる。》
 適当に投げたバスケットボールが必ずネットに吸い込まれる。後ろ向きで放った空き缶がゴミ箱に見事に収まる。そんな映像にだって必ず作為がある。今さら「必ず誰かの手を介して……」とか「影響力を施そうと考える……」とか言われてもねぇ。

 そんなことは、作家の日垣隆さんが12年も前に『情報の「目利き」になる!』(ちくま新書)で言い尽くしている。あるいは同氏の『秘密とウソの報道』(幻冬舎新書)、『情報への作法』(講談社+α文庫)などで詳しく語られている。
 また、コラムニストの勝谷誠彦さんは、大マスコミの嘘について、あるいは朝日新聞の捏造についてずっと論評をしてきた。そのあたりを踏まえて高木氏はこの本を上梓しているのだろうか。
 過去にそういったことがあったことは事実だ。それはみんな知っている。だから、今後、我々はこの情報の洪水のなかでどう対処していけばいいのか、そのあたりを詳しく語って欲しかった。