言い訳なら……

 先週の金曜日に11月下旬から続いていた大きな会議が終了した。いやいや会議自体はまだ続いているのだが、とりあえずワシャの出番が終わったということである。
 ワシャの部署が会議全体の答弁の取りまとめ担当なので、そのやり取りだったり、ワシャ自身への質問もいくつもあったりで、精神的にも肉体的にもフル回転した終盤の一週間だった。
 それに併せて、中村勘三郎丈の死去の影響もあったと思う。久々に精も根も尽き果てた状態で週末を迎えた。
 ワシャの信条は、「週末は元気に、病気はウイークデイに」なのだ(笑)。これが守れなかった(泣)。

 ワシャはけっして信心深くはない。どちらかと言えば、仏ほっとけ神かまうな、といった罰当たりなヤツなのである。でもね、ときおり仏様に無性に逢いたくなるんですね。そして京都の仏様もいいけれど、やはり仏様は奈良がいいと思っている。
なかなか出かける時が作れなかったが、この週末に隙間ができた。ここを逃せば当分行けないだろう。心身ともに疲労して、とくに前日、前々日とあまり眠れなかった。しかし清浄なる仏様に逢いたい。だから、仏像研究会(笑)の友だちを誘って奈良へ向かった。

 朝7時の新幹線に乗れば、9時前には近鉄奈良駅に到着する。徒歩で15分も行けば東大寺の境内地だ。毘盧遮那仏の支配する清浄な領域である。
 毘盧遮那仏奈良の大仏をお訪ねするには、やはり正面の大仏殿前の交差点から北に進むのがよい。御影の敷石を踏んで進行方向を望めば、木々の隙間から南大門の入母屋の屋根が見える。
 毘盧遮那仏がおわします大仏殿はまだ先である。鹿に誘われてゆっくりと歩く。あわててはいけない。大仏に逢いたいからといって南大門を素通りしてはいけない。修学旅行生がたくさんいたけれど、彼らはパシャパシャと写真を撮ると、風のように去って行った。それはもったいない。だけど、中高生に「仏像の良さを知れ」と言ってもどだい無理な話だろう。
 ワシャにしたって仏様が好きになってきたのは後年の話で、ガキの頃ならどこぞの生垣の陰で煙草でも吸っているのが関の山だっだ。
(つづく)