話してもわからないという現実を知らない人

 田島陽子のことである。
たかじんのそこまで言って委員会」での田嶋氏の決め台詞は「話し合えばわかりあえるるのよお」だ。
 田嶋氏、どうしてそれが現実的ではないということに気がつかないのだろうか。
 カンボジアではポル・ポト派に300万人以上の知識人が殺戮された。彼らは、話し合う機会も与えられず残忍な方法で殺されている。共産党下の支那中国では、なんと6500万人が体制に殺された。この犠牲者たちは共産主義者と話し合いの場が持てたのだろうか。
 佐藤優さん原作のコミック『憂国のラスプーチン』(小学館)に、アフガニスタンソ連兵のエピソードがある。戦車が走る道路上に乳飲み子が放置されていた。その赤子を救ったソ連兵が、母親を探す。近くの集落で母親はすぐに見つかった。「恩返しになにか食べていって」と彼女は言う。
 ソ連兵は、戦場でのささやかな善行に満足しながら女の申し出を受ける。しかし、それはアフガンゲリラの罠だった。ゲリラ側に捕えられたソ連兵は問答無用で……。
 多分、そんなことは世界中の紛争地域で日常的に行われているのだろう。もちろんそこで「話し合う」などという生ぬるい方法はいっさい通用しないのである。
 もちろん、話し合いで物事が解決するにこしたことはない。しかし、世界というものはそんな甘いものではない、ということを田嶋氏たちはどうして理解できないのだろうか。