隣人

 世田谷区で起きた隣人殺人事件である。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121010-OYT1T00849.htm
 ワシャにも隣人とのトラブルということでは経験があるので、元警視のこのじっちゃんの気持ちがなんとなく推察できる。
 被害者が3年前に引っ越してくるまでは、きっと静かで清潔な町内だったのだろう。しかし、傍若無人な隣人がやってきてそれまでの秩序を破壊した。ルールを守ることでその生涯を費やしてきた元警視(地方なら警察署長の肩書)にとっては断固許せない行為だったに違いない。家の周りが不潔である。テレビで見る限りゴミ屋敷の様相だ。またそれらの私物がみんなで共用している道路にはみ出す。その上、猫に餌付けをするためにノラが何匹もうろうろする。
 元警視は、町内で静かに暮らしていた。その証拠に近所の評判はいい。反対に被害者のほうは、周囲の隣人に気遣いを怠り、マイペースな生活を続けていた。はたしてどちらが被害者なのだろう。

 ワシャの周囲にも隣人とのトラブルは多数存在する。例えば、最近のことだが近くの広場に家が新築された。その家の周囲に細い路地があるのだが、新築する際は路地のセンターから2mセットバックしなければ建築許可がおりないルールになっている。
 もちろん従前から住んでいる住民はその取り決めを守ってセットバックして家を建て直してきた。ところがその隣人はセットバックせずにブロック塀を立ち上げ土盛り工事をはじめた。
 そこでワシャは作業中の業者に「セットバックしないとダメですよ」と注意をしたものである。
 しかし工事はいっこうに止まらない。仕方がないので市役所の建築課に連絡をしてようやく工事が中止となった。
 それから6か月後、隣人の新築工事は完了し、近所に引っ越しの挨拶に回っていたそうだ。そうだ、というのは、ワシャは会っていないのでわからない。6カ月間の工事の期間はうるさかった。でもこれでようやく静かになると安堵したものである。
 しかし、工事は終わっていなかった。隣人は中止していた土盛り工事を再開し、あっという間に道路用地の半ばまで自家の庭にしてしまった。ルール違反である。

 ワシャは平然とルール違反をするものが嫌いである。だから、隣家の人間とは交わらないようにしている。年齢を重ねるにつれ、こういう嫌悪が鬱積していくのだろうなぁ。

「マタイによる福音書」第22章39節に「隣人を自分のように愛しなさい」というフレーズがある。このフレーズは聖書のあちこちに出ており、ワシャの知る限りでは8箇所あったはずだ。残念ながら、凡夫のワルシャワには無理な話だ。とてもではないがそんな聖人君子にはなれそうもない。

 曽野綾子さんがいいことを言っている。
「気分の悪いものは見なかったことにしなさい」
 だから、気分の悪い隣人はワシャの視野の外に置くことにして快適な生活をおくるよう心掛けているのだった。