千両箱

 昨日、どうしても確かめたいことがあって名古屋に出かけた。なにを確かめたかったというと、笑わないでね。千両箱の重さと手触りを確かめたかったのである。
 10年ほど前だったと思う。江戸東京博物館に行ったとき、あそこでは千両箱に触ったり担いだりできる体験コーナーがあって、そこで手にしたことがある。ずっしりとした感触があったことは覚えているが、それ以外の記憶が風化していた。だからもう一度その手触りや重みを知っておきたい。そんな好奇心で、「三菱東京UFJ銀行資料館」に足を運んだ。
 千両箱がありましたぞ。展示してあるものが8個、これは本物だから触れない。そのかわりレプリカが体験用として置いてあるのでこれを抱えてみた。重さ16kgこれは重い。これを肩に担いで、商家の屋根から屋根へ飛んだり跳ねたり、こいつぁちょいと難しかろうぜ。
 天保小判で1枚11.2g、これが千枚なら11.2kgとなる。箱の重量も含めれば16kgは頷ける。
 でもね、少し気になることがあった。箱の高さである。展示してある千両箱にレプリカの一両小判が並べてあった。千両箱の内寸法がちょうど10×2で小判がならぶように出来ている。ということは、縦に50枚重なるだけの高さがあればいい。いわゆる切り餅(小判を25枚、50枚単位にして紙で包んだもの。正確には包み金)が五十両包みで33.4mmある。だから「銀行資料館」にあった高さ30cmもの大きな箱はいらない。もう少し平べったいもので千両は収まるはずだ。このあたりのことは疑問として残った。もう少し調べてみようっと。
 帰路、友だちにつきあってもらって某所で一杯。
 秋刀魚のお造りをいただく。山葵をのせて紫に浸すと、醤油の表面に脂のまくがひろがる。おおお、よく肥えてますなぁ。舌にのせると身が溶けていくようだ。居酒屋はビルの2階にあって、窓から外の景色が見える。暮れなずむ街を眺めながらほろほろと酔っていく。とても楽しい時間だった。いいこともあったしね。