スケープゴート

 福島第一原発の記者会見で有名になったあの西山審議官が勤務時間中に女性との「不適切な行為」に及んだため「職務専念義務違反」で停職1カ月の罰を与えられる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110930-00001104-yom-soci
 かわいそうに。西山さんの前の前のスポークスマンが、「炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」との発言、官邸側が問題視して首になり、前のスポークスマンは「(会見担当など)やりたかないんですけれども……」と発言したことが問題視され即座に交代させられた。そんなことがあって、回り回って、本省の審議官級の西山さんに白羽の矢が当たった。
 西山さん、急遽、ピンチヒッターに立ったのが祟った。西山さんが、単なる顔の見えないキャリアの一人であったなら、「職務専念義務違反」などという得体の知れない罪科に問われることはなかったろう。そもそも「職務専念義務違反」ってなんぞ?
国家公務員法第96条に、公務員の服務の原則として「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」と規定している。この「且つ」以下が「職務専念義務」で、西山さんはここに抵触し停職となった。
 でもねぇ、なんだか、スケープゴートのような気がしませんか。
 まず、「不適切な行為」ってのは、「女性職員と抱擁と口づけ」をしたことなんだそうな。まぁ審議官ともなれば、執務室という個室を割り当てられるから、様子をうかがえばその程度の行為には及べる。元気が良すぎたんだね、54歳の西山さん。
 西山さんは頭脳明晰の秀才だが、みてくれは大したことはない。どちらかといえば、水木しげるさん描くところの「川猿」似である。それが、頑張って30代の女性と「不適切な関係」になったのだ。おそったわけではない。セクハラでもない。確かに職場ではまずかったが、大臣官房付(左遷)の上に1カ月の停職とは厳しすぎないか。
 理屈を言えば、喫煙者はどうなのか、ということである。経済産業省にも愛煙家は多くいるだろう。彼らは、時折、席を外して喫煙ルームなどで至福の一服をしているのではないか。紫煙を燻らせる間、仕事をしているのかな。していないでしょ。職務に専念していないよね。なぜタバコはよくてキスはいけないのか!(いけないと思うけど)。

 なぜか西山さんが贖罪の山羊にされたように思えて仕方がない。そもそもキャリアなどという人種は、本来であれば流しの陰の暗いところでじっとして、そこでひそひそと禄を食んで、目立たないうちに天下りをしたいものなのだ。本当に断罪すべきは、審議官室でキスをした西山さんではなく、人前に顔を表さず、西山さんというしっぽ切りで逃げようとしている連中なのではないだろうか。