THE LEGACY OF THE SUN

 一昨日の日記で、「日輪の遺産」という映画の話に触れた。原作は浅田次郎である。確か原作本が書庫にあったはずだ。探してみたらやっぱりあった。久々に手に取ってみると懐かしいなぁ。買ったのは10年以上前だと記憶している。内容についても断片的にしか覚えていない。だから、ざっと目を通してみた。
 ああそうだ。舞台は多摩周辺だった。読み始めてまもなく「立川」とか「多摩川」といった地名が出てくる。ワシャは7月を立川で過ごしているので、土地勘があり、風景のイメージがしやすい。
 歴史に翻弄される若者たちも、キャストが決まっている。真柴少佐(堺雅人)、小泉中尉(福士誠治)、望月曹長中村獅童)、野口先生(ユースケ・サンタマリア)など、声まで脳裏に再生できるから読書が早い。
 物語は、現在と過去が交互に織り込まれ進んでいくのだが、真柴、望月は現在にも過去にも登場する。はたして60年の歳月を超えて、堺や中村がリアリティのある演技ができるのか、そのあたりも見どころと言っていい。

 物語の概要をネタバレしない程度に記す。
 大東亜戦争末期、真柴少佐、小泉中尉、望月曹長に「フィリピンで奪取したマッカーサーの財宝を、戦後の復興資金とために多摩地域に隠匿せよ」という密命が下る。3人は35人(映画では20人)の女学生を動員して財宝を運ぶのだった。終戦日の前日に、真柴に届けられた命令書には……。
 終戦の日に、この物語は一つの段落を終える。その後は、マッカーサーが乗り込んできて、財宝を探す物語に移っていく。
 ワシャ的には、この小説は終戦のところで終えてしまってもいいのではないかと思う。マッカーサーなどという歴史的に巨大なキャラクターが介入してくると、物語のリアリティが急速に薄れていくような気がする。浅田次郎も、マッカーサーに具体性を持たせようと、彼の様子や言動を書き込むのだが、書けば書くほど、マッカーサーは定型の中にはまり込んでしまう。
 映画にするなら、マッカーサー以降の話は、クライマックスの後の結の部分でクレジットタイトルにのせながらサイレントで観せるのがいい。佐々部清監督はそのあたりをどう始末しているだろう。そんなところも楽しみだなぁ。
 映画には20人の女学生が登場する。この娘たちにはリアリティがある。どの娘もどの娘も、みんな普通の少女なのだ。ここに可愛い子ばかりを集めてしまうと、映画は急速に色あせていくのだが、このあたり、佐々部監督のセンスはいい。8月27日からロードショーが始まる。期待してまっせ。

 予告編を見ていたら泣けてしまった。
http://www.youtube.com/watch?v=AFhRjL7Cz4g