7月23日に、群馬大学の片山教授の話を書いた。
http://d.hatena.ne.jp/warusyawa/20110723
片山教授は、津波の危険がある時には、「とにかく逃げろ、いの一番に逃げろ」と釜石の小中学生に防止教育を施す。その結果、学校にいた児童・生徒に犠牲者は出なかった。
昨日発売の『文藝春秋』に、地方自治ジャーナリスト(そんな分野があったのかいな)の葉上太郎氏が《津波に耐えた「死者ゼロの街」》という文章を寄せている。葉上氏は岩手県の洋野(ひろの)町に取材して、今回の三陸大津波で死者が出なかった自治体の理由を求めた。理由は釜石と同様で、「とにかく逃げた」結果である。本文を引く。
《今回の津波では、防潮堤の門を閉めた後、堤の上で煙草をふかしながら津波が来るのを待っていた消防団があったと報道されています。そのような姿を見た住民が逃げるでしょうか。門を閉めたら消防団が泡を食って逃げていく。それを目の当たりにした住民が『やばい』と感じるのです。》
洋野町では「消防団が率先して逃げる」ことに関して議論があったそうである。しかし、今回、その行動が功を奏した。むろん、釜石で防災教育を施していた片山教授も「人のことを考えるな。とにかく率先して逃げろ」を徹底して子供たちに刷り込んだ結果、小中学生の被害者は少なくて済んだ。
「消防団は住民の救助をする」とした防災計画や、「ここまでは安全、ここからは危険」を示した津波ハザードマップは、何の役にも立たなかった。むしろ、人の命を奪う結果となった。
根本的な防災対策を考える時期に差し掛かっている。
昨日、ワシャの勤務先に防災NPOのリーダーが訪ねてきてくれた。彼の要請を受けて、我が社から60数名のボランティアを被災地に派遣した、そのお礼に来たのだ。
彼は大震災直後から三陸に入ってボランティア支援をしてきた。ざっと5カ月も被災地にいたことになる。彼の管轄の陸前高田市、大船渡市のボランティアセンターの目途が立ったことと、お盆であることもあって愛知に戻ったのだそうな。
少し話をした。彼は悲痛な面持ちでこう言った。
「自殺者が後を絶たない」
今、彼の周囲で被災者が相次いで自殺している。それは中央のマスコミには報道されないが、地元では切実な現実らしい。今、被災地に支援物資は充足しているという。しかし、楽しみがない。被災者を明るくするようなネタがないそうだ。
今こそ、芸能人は被災地に入るべきではないか。歌声でもいい。噺でもいい。つまらぬギャグでもいい。それぞれの得意の分野で被災者を元気づける、そのくらいのことはしろよ、芸能人。