物事は縦に見たり横に見たり逆しまに見たり(15日目)

 昨日の「たかじんのそこまで言って委員会」で、中部大学の武田邦彦教授の初出演の時の映像が流れた。
 当初、武田先生の発言のあまりのストレートさに三宅久之さんや宮崎哲弥さんは少し引き加減で話を聞いていた。身を乗り出して聴いていたのは勝谷誠彦さんばかりなり。
 その時にダイオキシンの話が武田先生に振られた。武田先生いわく、
「そんなものは大丈夫です。焚火のダイオキシンが危険なら、焼き鳥屋のオヤジはみんな死んでいる」
 てなニュアンスの発言をした。これに猛然と食って掛かったパネラーがいた。民主党福山哲郎衆議院議員である。
「そんな無責任なことを言ってはいけない
 今になって見れば、無責任な発言は誰がしたのか一目瞭然である。
 この放送は数年前だったと思うが、その段階ですら「史上最強の猛毒物質説」がウソだというのはリテラシーの高い人々の間では常識だった。ダイオキシンで死者は一人も出ていない。こんなリテラシーのない人物が政権与党でブイブイ言わせているのかと思ったら悲しくなってくる。
 
 先日、新宿で開催されたジャーナリストの日垣隆さんのセミナーに行ってきた。そこで毎日新聞編集委員の斗ヶ沢秀俊さんのお話を聴く。その時に平成11年の毎日新聞に斗ヶ沢さんが書いた記事のコピーが配られた。内容は「ダイオキシン報道」についてである。記事を引く。
ダイオキシンに毒性があることは間違いない。》
 と前置きをしながら、
《一部の研究者は「青酸カリやサリンよりも毒性が強い」「1グラムで1万人が死亡する」といった見解を出し、メディアはこれらを無批判に伝えることが少なくなかった。》
 1976年、イタリアのミラノの郊外にあるセベソという町で農薬工場が爆発した。その時に300グラム以上のダイオキシンが周辺に飛び散った。300グラムということは、300万人のイタリア人が死のはずだったが、死者は0だった。
 斗ヶ沢さんは続ける。
《「青酸カリよりも猛毒」という表現は動物実験では正しいとしても、日常生活への影響を考える場合には適切な表現ではない。》
 肺ガンの死者は世界中で年間130万人が死んでいる。喫煙由来のガンが多いのは間違いない。タバコの規制は厳しくなってはいる。しかし禁止はされていない。これに対してダイオキシン由来の死者が出たという話を聞いたことがありますか。ワシャは寡聞にして知らない。
 そういうことなのである。

 権威といわれていた学者の話が捏造で、異端といわれていた武田先生の話が真実だった。偉そうに運転手付きの車にそっくり返っている政治家は無知蒙昧で、地道に調査を続ける記者やジャーナリストの中に深い知見を持つ人材がいる。
 なんだかこの国のありようは、すべてが逆しまになっているような気がしてならない。