立川(6日目)

 午前5時、曇り。窓から見える道路が濡れている。夜分に雨が降ったか。
 怒涛の研修は6日目に入っている。昨夜は金曜日ということもあって、深夜まで仲間と呑んだ。だから、少し寝過ごした。
 腰はかなり軽くなっている。今日、整形外科に行くつもりだったが、ここまで良くなってくると注射を打つのも嫌だなぁ。

 昨日の研修の講師は笑った。
 講義室に入ると、教壇の脇にあるコントロールテーブルに、長ったらしいタイトルの分厚い本が20冊ほど積んである。福祉系の本で、定価は5,670円とお高い。
 この講師、のっけから本の紹介を始めて、講義中も「詳細については、この本を読んでください」と言う。講義の重要な部分は「本に書いてあるから」となるから、核心の部分がまったく見えてこない。2時間半の講義が、本の販売促進に費やされた。さすがに此れだけ長時間、「本買え〜本買え〜本買え〜」とやられると、マインドコントロールされちまうんですな。年寄りを、野菜や洗剤で釣って、高額な布団を買わせるようなもんですわ。
 終了のチャイムが鳴ると、何人かがコントロールテーブルに集まった。みんな、こぞって買っていく。ワシャも講義の途中から、その本が欲しくなってきた。財布から1万円を出して、買う用意をしていたくらいだ。
 ところが、ワシャの中の天邪鬼が囁いた。
「お〜い、ワルシャワ、お前、福祉に興味があるのか?本当にその本が欲しいのか?」
 目が覚めた。ワシャは1万円を財布に戻すと、講師にサインをもらっている受講生を尻目に講義室を後にしたのだった。

 死刑廃止論者の中山千夏だったっけ。かつて「被害者の家族は死刑を望まない」などと妄言を吐いていたが、そんなことはないのだ。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/lindsay_ann_hawker/?1310130815
リンゼイ・アン・ホーカーさんのお父さんも、市橋達也の極刑を望んでいる。平和が好きで、人権が好きで、平等が好きで、中国が好きな中山のような連中がこの国を壊してきた。
 そのことについて、石原東京都知事がこんなことを言っている。
《日本人のアイデンティティは「平和の毒」に侵されて、芯から腐ってしまったのではないかと思うんです。》
文芸春秋』8月号の特別対談での発言である。この苦言を受けて数学者の藤原正彦さんが、こう答えている。
《日本人の質は史上最低ですね。日本人のモラルはとことん低下しました。(中略)平和を他人任せにしてきたツケが、ここにきてどーっと出てきたような気がしているんです。》
 石原知事が司馬遼太郎の言を引いているのでそれも記す。
《石原くん、日本人というのは本当に厄介な国民やな。日本人にとっては、ある種の理念のほうがそれに関わる現実よりもはるかに現実的なんやから》

 前述した本売り講師の話に戻る。
 東京都下でひとり暮らし高齢者がもっとも多いのが港区だそうな。その数、10,000を超える。その内の16%が生活保護を受けていると言っていた。すごい数だな。港区といえば、赤坂、六本木のある繁華な街だ。麻布、青山、白金などという高級なイメージをもつ街もある。その華やいだ街の一角で1,600人もの生活保護受給者がいるのか……。すごい数だな。
 本の宣伝をしながらも、後半は講師の話が面白い。詳細な調査報告、独居高齢者19人の1週間分の日記などなど、もしかしたら、その本はけっこう資料的に重要な本ではないだろうか。
 やっぱり買っておくべきだったか……。