お粗末な本部がまず責任をとれ!

 八甲田山雪中行軍で随行本部がいらぬ口を挟んだために、大きな犠牲が出てしまったことは昨日書いた。
 それと同じことが今回の福島第1原子力発電所の事故でも起きている。
 すっから菅が、幇間班目に踊らされて、「海水注入を止めれー!」と官邸で叫んだ。このために福島の現場では55分にわたって炉内への注水作業が中断した。
 このことが今回の事故に多大な影響を与えるところだったが、現場の吉田所長は、すっから菅の指示などには従わずに自らの判断で注水を続けて、事態が悪化するのを防いだ。現場に自己判断のできるリーダーがいてよかった。吉田所長の代わりに小心者の総務系官僚のような人物が座っていたら……と考えるとぞっとする。吉田所長の決断に敬意を表したい。この行動もある意味で尖閣ビデオを公開した海上保安庁の一色保安官(当時)の義挙や、仙谷サヨクに逆らって霞が関を去った古賀茂明さんの潔さにつながるものを見ることができる。
 ノモンハン戦争の時に、ロシアの司令官に言わしめた「日本軍は、指導者はバカばかりだが、現場の将兵は優秀だった」に相通じるところがある。

 でね、すっから菅のこのたわごと発言はいったいなんだろう。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110528-OYT1T00603.htm
《同原発吉田昌郎所長が注水継続を独自に判断したことに関し、「結果としても、注入を続けたことは、間違いでなかった」として、吉田氏の処分は必要ないとの認識を示した。》
 吉田所長の判断は間違っていないということは、すっから菅と班目の判断が間違っていたということに他ならない。お前らが処分されろ。
 そもそも、東京にいて「注水しろ」とか「注水をやめろ」とかの判断ができると思っているのか。
 日経新聞の記事を引きたいのだが、どうしたわけか複写ができない。他の新聞社はコピーできるんですけど、日経新聞だけ特殊なバリアでも張ってあるのかなぁ。仕方ないので写す。

《3月12日午後3時36分、福島第1原発1号機が水素爆発。原子炉を冷やすため午後6時に首相が「真水の処理をあきらめ海水を使え」と指示し、官邸内での協議が始まった。》
原子力安全委員会の班目春樹委員長がこの場で「再臨界の危険性がある」との意見を述べたと発表した》
細野豪志首相補佐官は22日のフジテレビ番組で、注入中断の背景に班目氏の再臨界の指摘があったと説明した。》
(ちなみに「再臨界」というとよく解らなくなって誤魔化されてしまうけれど、要は「核爆発」のこと)
 つまり班目委員長が「核爆発するぞ」と大騒ぎをして、その結果、すっから菅が海水注入を止めて55分の空白が生じたというお粗末な話。ところが賢明な現場所長がバカの騒ぎ(指示)を無視して独自に注水を続けたことでことなきを得ましたとさ。
 どうです。この二題話で吉田所長に処分が下せますか。

 この班目の「再臨界(核爆発)の危険性がある」発言をめぐって、また言ったの言わないのという不毛の話が始まっている。
http://www.sanspo.com/shakai/news/110523/sha1105230503006-n1.htm
《海水注入が一時中断した問題で、政府・東京電力の統合対策室は22日、「注入によって再臨界の危険性がある」と指摘したとしていた原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長(62)の発言を「再臨界の可能性はゼロではない」に訂正することを決めた。細野豪志首相補佐官(39)が官邸で記者団に語った。》
 おいお〜い、「核爆発の危険性がある」と「核爆発の可能性はゼロではない」とどう違うのかな?ワシャにはまったく同じに読めるけど……。
 記事は続く。
 《班目氏は「危険性」の発言について同日、内閣府で記者団に「そんなことを言ったら、私の原子力専門家の生命は終わりだ。名誉毀損であり、冗談じゃない。怒り心頭だ」と全面否定。同日、細野氏らに訂正を申し入れていた。》
 班目さんは、今までの幾多の言動で、すでに「原子力の専門家」としての生命は尽きている。今さら怒って見せても説得力はない。
 そうそう、班目さんの、過去のとんでもない発言をご披露しましょうか。
「(原子力発電には)いろんなわからないことがあるから、えーと、安全率っていうかですね、余裕をたくさんもって、で、その余裕に納まるだろうなぁって思って始めているんですよ。(中略)今まではよかったよかったでできてます。ただし、よかったじょないシナリオもあるでしょうねって、言われると思うんですよ。その時は原子力発電所は停まっちゃいますよ」
原子力発電に安心する日なんか来ませんよ」
「安心なんかできるわけないじゃないですか。あんな不気味なもの」
「最後の処分の話は、最後はお金でしょ。どうしてもみんながうけいれてくれない。だったら、おたくにはこれこれって言ってきたけど、2倍払いましょ。それでも手を挙げないなら5倍払いましょ、10倍払いましょ」
「処理費なんてたかが知れいているから、地元調査費の20億円、あれ、たかが知れているらしいですよ。だから原子力発電ってものすごく儲かっているんでしょうね(笑)」

 2005年のテレビ局のインタビューにへらへら笑いながらこんなことを言っている。ある意味ですごいオッサンだ。
 そして5月24日には《「再臨界(核爆発)の可能性はゼロではない」という言葉は「再臨界(核爆発)は事実上ゼロだ」という意味で申し上げた。》
って、「ゼロではない」と「ゼロだ」ではまったく内容が違ってくるんですけど。
 そして、班目さん、こんなことも口走ってしまった。
「3月12日の夜の官邸会議で、再臨界が大きな話題だったという記憶はない」
 おいおい、もちろん東北全域の地震津波被害についても話し合われただろうが、どれだけ言い換えようが「再臨界」というのは「核爆発」のことで、そんなことはすっから菅でも知っている。福島第1原発に危機的状況が差し迫っているのにも関わらず、大きな話題にしていなければそれはそれで重大な責任問題になると思うがいかがかな。