四十九日のレシピなど

 友だちから、伊吹有喜四十九日のレシピ』(ポプラ社)を紹介してもらった。早速、取り寄せて読む。
 ほのぼのとしたいい作品だった。途中、2度ほど涙ぐんだ。読み終わって……というか読んでいる途中で「死がまた新たな出会いを生むこともある」なんてことを考えていた。
 すでにこの作品は、NHKでドラマ化されているということで、本の帯には、主役の和久井映見伊東四朗が川辺に座っている写真が載っている。だから、小説を読むのっけから、主人公とその父親は和久井と伊東で固定された。通常それは、本を読むのにうっとうしいのだが、う〜ん、確かに和久井と伊東でしっくりとくる。著者は端からこの二人をイメージして小説を書いたのではないのかと思うくらいはまっている。
 そしてこの物語で重要な役が「井本」と呼ばれる山姥メークの少女だ。第1章でコロッケサンドとともに登場し、終章で溶けて消えるように退場していく。この少女のイメージがどうしても浜田ブリトニー(女性漫画家)に重なる。NHKドラマでは違う少女が演じているらしいが、ワシャの脳裏のスクリーンでは浜田ブリトニーになる。
 まだ読まれていないかたもおられるから多くを語らないが、気持ちがほっこりする佳作だと思う。

 夕べ、大府市の居酒屋で小さなパーティーを開いた。初めての店だったがなかなか素材がよく、信濃雪鱒の御造りが絶品だった。山葵をはさんで醤油を少しつけて食べる。身が甘く、とろりとした食感がいい。帰りは小ぬかの雨になったが、気にならない程度で傘の用意もなかったので駅まで濡れて歩く。
「春雨じゃ、濡れてまいろう」の心境でしたね。

 このところ茉莉花ジャスミン)の話題を続けているが、この花の出典はきわめて古い。現存する経典の中でも、最古に属するといわれる「法句経」の中に登場している。残念ながらワシャの持っている『仏教聖典』(三省堂)の「法句経」は抜粋なので、茉莉花の出てくる54、55章は出てこない。だから他の本をあたりましたぞ。そうしたら、中村元『仏教植物散策』(東書選書)にその部分に触れた文章に出くわした。
《花の香りは風に逆らっては進んでいかない。栴檀もダガラもジャスミンもみなそうである。しかし徳のある人々の香りは、風に逆らっても進んでいく。徳のある人はすべての方向に薫る。》
 中国共産党がもっとも嫌う仏教経典の中に「茉莉花」は潜んでいた。野に咲くジャスミンの香は風に流れる。しかし、人々の自由への思いは、風に流されず四方に拡散していく。そう願いたい。