倍賞千恵子さん

 夕べ、隣の町で倍賞千恵子さんの講演会があったので、友だちと一緒にでかけた。それにしても倍賞さん、お若い。年齢は69歳とのことだが、とてもとても……会場に詰めかけている69歳のおじいさん、おばあさんとは明らかに一線を画している。さすが大女優である。
 この人の映画はずいぶん観てきた。「寅さんシリーズ」はもちろん全作を何度も観た。発売されているシナリオ集もすべて持っている。「寅さんシリーズ」ではさくらは控えめな役どころではあるが、その存在感は大きい。
 講演の中でこんなエピソードを披歴している。
 買い物などをしているとときおり倍賞千恵子ではなく、諏訪さくらが出てくるのだそうな。
「あら、このエプロン私(さくら)に似合いそうだわ」
 とついついさくら目線で衣料などを求めるという。そしてそれをきっちりと使い込んで体に馴染ませて、撮影に持ち込む。
 ほほお、さすがに見えざるところでの努力というか気配りというか、そういったものが「寅さんシリーズ」の厚みを支えていたんですな。

 このシリーズでの倍賞さんも印象に残るが、ワシャの一押しは「幸福の黄色いハンカチ」の殺人犯の妻役だ。この役を倍賞さんは切ないほど見事に演じている。
 一緒に講演会に行かれた人が、この作品を「まだ観ていない」とおっしゃるので、「是非、ご覧くだされ」と薦めておいた。40代の高倉健、まだ初々しい武田鉄矢桃井かおりなどがいい演技をしている。この作品は、いわゆるロード・ムービーで高倉、武田、桃井の3人が北海道を駆け巡りながら、それぞれの愛を獲得していくというお話、ラストはまちがいなく涙なくしては観られませんぞ。

 もっと倍賞さんのことが書きたいが、今日は午前中に大きな会議が二つ、それもワシャが30分以上一人でプレゼンをすることになっている。だから急いで出勤しなければならない。二つの会議が終わった後は地元の商工会議所で「環境」をお題に一席ぶつ。この準備がまだできていない。急いでシナリオをまとめ上げなくてはいけない。というか、まとめる時間そのものがない。
 落語家ではないのでぶっつけで盛り上がる話をするのは至難の技だが、ええい、なんとかなるだろう。