新帝国主義の時代(前編)その2

(上から続く)
三重県の亀山にあるシャープの工場ラインが丸ごとこっちに移ってくるアルヨ」
 話のニュアンスでは、亀山を引き払って上海に工場を移すということらしい。確かに日本で工場拡張をしようと思ったって、地権者の説得から、買収、造成など順調に進んだって何年もかかってしまう。そんな悠長なことをしているなら、住民の意向など無視してガラガラポンできる中国に工場建設したほうが楽だわなぁ。おまけに人件費も安いわけだからね。
 今頃、亀山市では大騒ぎだろうなぁ。亀山市、シャープでもっていたというところがあるから、シャープの移転ともなれば、一気に交付団体に落っこちてしまう。シャープも酷いことをする。
 でも、シャープばかりを責めることもできない。一番のネックは中国の経済帝国主義にあるのだ。今、中国市場は世界の企業から見れば、垂涎の的だろう。どの企業だって進出したいに決まっている。しかし、そう簡単には中華帝国は門戸を開けてはくれない。中国はこう言い出した。
「モノだけ中国に持ち込んで売ろうとするのはお断りアルヨ。技術を中国に移植して、中国国内の工場で生産したものであるなら販売することを認めるアルヨ」
 商品だけ持ってくるな、技術力を持ってこい、ということなのだ。だから、シャープが中国国内でソーラーパネルを売ろうと思えば、いやいや、シャープばかりでなく、どの業種も中国に市場を求めようとすれば、その製品製造の技術を中国に持っていかなければならない。なんのことはない、21世紀の朝貢貿易ではないか。
 上海に出来つつあるシャープの工場には、中国の目論見どおり、日本のソーラーパネルの最新技術が持ち込まれるだろう。そして、その最新技術はシャープの工場に隣接する中国の研究所や大学の研究施設で、骨の髄までしゃぶりつくされて、早晩、シャープのソーラ―パネル技術は「これは中国の技術アルヨ」ということになって、ディズニーランドを真似たバッタ物遊園地のように世界に売られていくんだろう。メーカーは「シャーペ」とか「シャーピョ」になるんだね。

 冗談ではない。だから、シャープの上海工場に隣接して研究所や大学を造っているのである。こうして中国は、経済帝国として巨大化していく。これが新たな帝国主義なのである。
(明日に続く)