本当は恐ろしいバッタ本 その2

(上から続く)
 また、北朝鮮が金ファミリー1点に権力が集約されているわけだけれども、江戸時代は、300の藩に分かれて自治が行われていた。例えば尾張藩内では、尾張藩のルールがあり、幕府の隠密であろうとも自由に活動などできなかった。
 そのいい例が、八代将軍吉宗の時代である。吉宗は質素倹約を旨として幕政を建て直そうとした。江戸の将軍様のやれる範囲というのは自分の江戸藩400万石の中だけのことなんですね。これに反発した尾張の藩主徳川宗春は、名古屋に一大歓楽街を誘致しケチな政策をやっている吉宗に反抗した。
 ほらぁ〜、ここでも八幡さんの主張が崩れるんですな。彼は「江戸やピョンヤンという首都の市民を優遇することで、人々の不満が体制を脅かすのを避ける仕組み」って言っているけれど、江戸だけが優遇されていたわけじゃないって。江戸時代の大坂や京都だって元気だったし、名古屋だって負けてはいない。北陸の金沢でも、東北の仙台でも、日本全国の城下町で文化の花が開いていたし、北から南まで江戸時代は百花繚乱だったと言っても過言ではあるまい。
 八幡さん、「密告による体制維持」も一緒だと言うが、江戸期の人々をバカにするのもいい加減にしろ。江戸時代、どれだけの人が幕府批判をしたか。手を換え品を替えて幕府のお達しに逆らったか。
 歌舞伎なんていう芸能は、そのまま武士や権力者への体制批判だと言ってもいいくらいえげつないものだった。「忠臣蔵」なんて、幕府のやり口を徹底的に批判しているじゃぁないか。そんな演劇がピョンヤンでやれるわけがない。
 バカ本のまだ4ページ目でこれだけの突っ込みができる。ある意味で凄い本だ。