2009年、中国の自動車販売数が1300万台を超える。
http://www.chinapress.jp/consumption/19346/
保有台数はというと、5000万台程度で、アメリカの2億2500万台には程遠い。因みに日本は7500万台となっている。人口比の保有台数を見ても中国はまだまだ車社会になっていない。今後の進展の余地がたっぷりあるような気がするので車メーカーが中国市場をめざしている。
しかし、21世紀の世界の自動車市場として中国にモータリゼーションが起きるのだろうか。
問題は2点あると思っている。1つ目は中国のインフラである。中国は、アメリカ、日本などに比べて車社会を実現するための基盤整備ができていないと思う。だから、少ない幹線道路に車両が集中し、極端な渋滞を招いていることも確かだ。このインフラ整備をどうするかが大きな問題になる。「中国大陸改造論」ではないが、軍事費を道路建設費に回してでも道を造り続けないとあっという間にパンク状態になる。
2つ目は致命的な問題と言っていいだろう。中国が、アメリカまではいかずとも日本程度の車社会になるかといえば、それは難しいと言わざるをえない。空母も原子力潜水艦も宇宙開発も止めて中国全土をネットワークする幹線道路を造ることができたとしよう。そうすれば日本と同程度までの自動車の大衆化が進むかといえば、それは不可能だ。日本が1億2000万人の人口に対して7500万台の自動車を保有している。普及率は62%ということになるよね。これを中国の人口に当てはめると8億台になる。中国は日本と肩を並べるだけでもこれだけの車を保有しなければならない。現在の保有台数の10倍にしたって5億台である。はたして中国がこれだけの車を走らせるための石油を確保できるだろうか。これが2つ目の理由である。
世界の「オイルピーク」は2005年に過ぎてしまった。世界にたった2つしかない巨大油田のガワール油田とブルガン油田の限界は見えている。もうこの世界で新たな油田、それも大きいのが見つかる可能性はゼロと言っていい。世界に残された石油は富士山をお猪口に見たてると、二、三分目入るかどうかといった量しか残っていない。
地球上には中国のモータリゼーション――もちろんその後に続くインドも含め――を支えるだけの資源量がないのである。中国がモータリゼーションを迎えるその前にエネルギーの安全保障上の問題が顕在化するしかない。
「ない袖は振れない」これが現実だろう。