ソ連とドイツ

 今朝の朝日新聞国際面。第2次世界大戦の原因や評価を巡ってロシアとヨーロッパ諸国が火花を散らしている。発端は、欧州安保協力機構が人権と自由に関する決議を採択し、その中に「8月23日をスターリニズムとナチズムの犠牲者追悼の日にする」とか「20世紀の欧州はナチススターリン主義という二つの全体主義体制を経験した」などという記述があり、そのことにロシアが反発しているということらしい。
 ロシアの言い分はこうだ。
ソ連ヒトラーナチスドイツと同列に扱おうする試みはロシア国民への侮辱であり受け入れ難い」

 え?ヒトラースターリン毛沢東と言えば20世紀の恐怖の独裁者3人組ではないですか。ある意味においてスターリンソ連ヒトラードイツよりも酷かったのではないですか。それにヒトラーには知性が感じられるが、スターリンには残虐性しか見当たらないんですけど。
 少なくとも、ドイツ軍兵士は勤勉で紳士的だった。もちろんドイツ軍による戦争犯罪は存在する。非戦闘員の殺害や捕虜の虐待もあった。しかし、ソ連軍兵士がヨーロッパや満州で行った戦争犯罪は桁外れだ。スターリンソ連は1945年8月9日に、日ソ中立条約を一方的に破棄して日本支配下の朝鮮と満州に攻め込んできた。このルール無視の攻撃も酷いが、その後、進駐してきたソ連軍兵士の質の悪さは尋常ではなかった。とくに婦女子への暴行・強姦は最悪だ。それも日本人だけではなく朝鮮人、中国人女性に対しても見さかいなく襲ってくる。『世界戦争犯罪事典』(文藝春秋)にこうある。
《日本人の集結地に夜な夜な襲いに来るソ連兵に対して、男子が団結して防ぎ、女性が地下室や天井裏に逃れるなど、さまざまな手が打たれた。暴行を恐れた女性は丸坊主になり男装した。女性を守るために立ち上がった男性が、ソ連兵に殺されるという悲劇も起きた。また、従来の職業女性や生活の苦しい避難民女性に依頼して、ソ連兵の要求に応えた例も少なからず生じている。》
 こういった悲劇はソ連が進駐したヨーロッパでも起きている。ソ連があの時期の行った残虐行為を列挙したら、それこそ膨大な量となるだろう。
 ロシア上院はどの口で「ソ連ナチスは違う」と言うのだろうか。