問題は別にある その1

 問題は、二酸化炭素の排出=地球温暖化=気候の激変=大災厄ではない。極論を言えば、現時点でCO2の増加と気温の変化には因果関係はない。それよりも大きな問題は「資源の枯渇」にこそある。
 20世紀文明を支えてきた石油の採掘ピークは2005年だった。すでに生産は減退を始めている。このところじわじわとガソリン価格が上昇し始めたでしょ。これも資源の枯渇の兆候と言っていい。欧米先進国に新興の中国、インド、ブラジルが加わって資源の争奪戦が始まっているが、分け合うパイは残りわずかだ。いずれ石油をベースに置いた人間の生存基盤は衰えていかざるをえない。
 しかし、原子力もあれば石炭もある。石油連盟の発表によればオイルサンド、オリノコ重油オイルシェールなどで280年分があるということになっている。石油連盟が言うんだからきっとそれらは存在するんでしょう。でもね、あっても意味のない資源もある。例えば、10の資源を得るのに10のエネルギーを投入しなければならないとしたら、その資源には価値がないということになる。これをEPR(Energy Profit Ratio:エネルギー収支比率)が1という。石油はEPRが極めて高い。ペルシャ湾岸の油田から取れる石油のEPRは60程度、枯渇し残りわずかなアメリカの油田で10程度である。因みに他のエネルギーのEPRを羅列すると、石炭で30、原子力17、水力15、地熱7、風力4、太陽光にいたっては1でしかない。
 資源は存在する量ではなく、それを得るために必要なエネルギーも考慮しておかないと大変なことになるということだ。
 エネルギー資源についてはかなり悲観的に考えた方がいい。エネルギーがなくなれば、いずれ人類の築き上げた文明は放物線を描いて退化、収縮していくだろう。資源を食い潰せば縄文人のような生活に戻らざるをえない。20世紀の後半から21世紀の前半というごく限られた時代に生きた人類は後世の人類から恨まれるだろうね。なにしろありったけの資源を食い散らかしていっちまうんだから……