知産千消(ちさんちしょう)

 ワシャが環境の勉強会などで使う手法なのだが、パワーポイントで世界地図を映しながらこんな話をする。
「私は昨日、夕食にタコを食べました。何気なくトレーに貼ってある原産地表示を見ると、なんと、モーリタニアと書いてあった。モーリタニアですぞ。モーリタニアがどこにあるかご存知ですか。サハラ砂漠の西の果て、アフリカ大陸を右向きの頭蓋骨に例えるなら、調度、後頭部の先端に位置し大西洋に面しています。そこでタコはすくすくと育って、それから海底をモソモソと這って、喜望峰を回り、インド洋を横断し、マラッカ海峡を通り抜け、南西諸島海溝をものともせず、三河湾まで辿りついて、漁師さんに捕まって、市場にだされ、スーパーに並び、私の家の食卓にならんだんですね」
 ここで、受講者をぐるりと見渡してから、おもむろに声を上げる。
「違〜う!」
 世界地図のモーリシャスと日本の位置を指し示しながら続ける。
「どんなに根性のあるタコでも、モーリシャス沖から3万キロも這って日本まで来られません。モーリシャス沖でモーリシャスの漁師さんに捕獲されたタコが、船に乗って日本まで来たんですな。その船は当然、石油を使って動いています。ワシャは大変なタコを食っていたわけですね」
 ここでおもむろに近所のスーパーのチラシを出して見せる。
「これは今朝の○○スーパーのチラシです。いいですか、牛肉がオーストラリア、サーモンがアラスカ、ホワイトえびがインド、チキンがブラジル産となってまっせ。こんな食品を食べていて、少しばかり省エネをしたからといって、まったく意味がないと言うことがお分かりでしょうか。だから『地産地消』が重要なんですね」
 と、話を結ぶのである。
 そうすると「この日記の題が違っていないか?」ということになる。題には「知産千消」とある。
 先日、千葉県の幕張に研修に行った。その時に職場へのお土産にと「千葉限定 鯛せんべい」を何箱か購入して愛知に戻ってきた。なかなか美味しいせんべいで好評だったが、製造者の欄を見て、びっくらこきました。
「愛知県知多郡」と書いてあるではあ〜りませんか。知多郡といえば、ワシャの住んでいる三河の隣りの郡なんですぞ。ワシャはわざわざ千葉まで行って、愛知産のせんべいを購入し、愛知に持ちかえって食べていたんですな。愛知産を千葉で買う、これがホントの「知産千消」なーんちゃって。全然、エネルギーの節約になっていませんでした。反省。