金城界隈

 昨日、年始恒例の大槻文蔵率いる名古屋清韻会の能の集いが名古屋能楽堂であった。知人がそこで舞囃子を舞うということなので顔を出す。能楽堂の暗めの照明の中に浮かび上がる鏡板の松図がいかにも新春らしい。中正面後方の椅子に座って鼓や笛の音、朗々と流れる地謡(じうたい)に身を委ねていると嫌なことを忘れますな。
 これも毎年恒例なのだが、能楽堂に行く前に名古屋城を散策することにしている。名古屋城天守金鯱がのっていることから金城とも言われる美しい城だ。残念ながら天守、小天守ともに鬼畜米英に焼かれてしまって、現在のものは昭和34年に再建された鉄筋コンクリート造である。でもね、名城の杜越しに見える五層の天守は趣がありますぞ。
 ただ、いけないのが天守東側に飛び出しているエレベータである。金城の姿の一番いいロケーションが東の広場からの眺めだと思っている。しかし、そこに城とはまったく馴染まない立方体がくっついている。せっかく江戸の昔にイメージが膨らみかけたものがエレベーター棟の角に引っ掛かって割れてしまった。
 もう少しやり方はなかったのか。金城のどてっぱらに穴を開けて雅趣のないエレベーターを設置しなければいけなかったのだろうか。目立たない設置方法があるようにも思うのだが……
 そんなことをあれこれと考えながら名古屋城界隈を散策したのだった。あ〜寒かった。