落語会に行く

 葬式の後、落語会に行く。桂ざこば月亭八方林家正蔵、林家いっ平など。
 前座話で桂ひろば、ざこばの弟子である。演目は「動物園」。とある男がアルバイトで動物園の虎に成りすますことになる。虎に成りきっていると、ライオンが檻の中に入ってきて決闘をすることになる……というような噺。前座としては健闘した。
 いっ平は「泰葉」ネタで客を掴んで、師匠衆の楽屋話を披露する。そこからつないで、「荒茶」を披露、教養のない加藤清正福島正則が茶会で大失敗をするという噺。加藤清正の実直ぶり、福島正則の阿呆ぶりが上手く演じ分けられていた。芸風は三平を強く意識している。もう少し枯れてくると面白いかも。
 ざこばは相変わらずのネタ「子別れ」である。この人、こればっかりやっているような気がする。枕で笑いを取るのは、いつも鎹(かすがい)の現物見せである。本物をひょいと出して、その意外性で客を笑わせる。でも、何度も見ていると「ああ、またか」ということになるし、この噺のオチが「鎹」だから、そこを枕で強調してしまうのはいかがなものか。滑舌も悪いし、噺の組み立てが雑で、重要な伏線を忘れているから泣かせるところで泣かせられない。噺を端折るから、熊さん、お花、亀坊が上手く演じ分けられない。そして何より「間」の取り方が下手だ。勢いだけの落語だわさ。
 古今亭志ん輔が「落語百選4」で同じく「子別れ」をやっているが、ざこばよりはるかに上手い。
 正蔵は、大名跡を継いだだけあって、古典をしっかりやろうという意気込みは感じられる。軽薄さは抜けたようだ。このまま精進していけばもう少し上手くなるだろう。しかし、義兄の小朝には追いつけまい。
 酷かったのは月亭八方だ。還暦を迎えたというのに芸がちっとも身についていない。風格というものが感じられなかった。しょせん吉本興行の芸人でしかないんだね。演目は音曲噺の「稽古屋」。八方なりに黒田武士を舞ったり、長唄を披露するが、少しは練習したんだろうけど、素人芸の粋を出ない。八方よりひろばの方がよっぽど良かった。本物になるにはまだまだ精進がいりまっせ。