行ったり来たり

 高羽哲夫という名キャメラマンがいた。「寅さんシリーズ」の全作、「幸福の黄色いハンカチ」や「息子」を撮影した人である。
 この人について山田洋次監督がこんなことを言っていた。
「あんなキャメラマンはいないよ。控えめな人で、あれだけ能力がありながら、自分を売り出そうとしないという人は」……
 このセリフを引用しつつ、目立とう目立とうとしている自民党総裁選に出馬表明している馬鹿どもをからかってやろうと思っていた。しかし、上の山田洋次さんのセリフが載っている「キネマ旬報」が、ワシャの大好きな「男はつらいよ」40周年記念大特集だったので、ついつい読み耽ってしまったぞなもし。特集を読んでいるうちに、何度か泣いてしまって、感動した場面を思い出してしまって、馬鹿な政治家どものことなど、どーでもよくなってしまった。勝手に馬鹿やってろ!ってな心境だ。
(突然方向が変わってこめんちゃい)

 山の中の停留所でバスを待つ寅次郎。
寅の前にリリー(浅丘ルリ子)が立っている。
寅「(リリーに気がついて)どこかでお目にかかったお顔ですが、お姐さん、どこのどなたですか」
リリー「以前、お兄さんにお世話になった女ですよ」
寅「はて、こんないい女をお世話した覚えはございませんが(笑)」
リリー「ございませんか、この薄情もの!(笑)」
寅「何してんだよ、お前、こんなところで」
リリー「商売だよ、お兄さんこそ何してんのさ、こんなところで」
寅「俺は、お前、リリーの夢を見ていたのよ」

男はつらいよ』の第25作「寅次郎ハイビスカスの花」のリリーとの再会シーンである。昭和55年の作品である。名作映画というものは何年経っても色褪せないものですな。
 そうそう昭和55年といえば、時の総理大臣大平正芳に対して社会党が内閣不信任案を提出し、自民党内部の反主流派が欠席したために、不信任案は可決され、このために衆議院は解散となり、大平正芳は総選挙の最中に心労のために心臓発作を起こして憤死してしまった。その要因をつくったのが誰あろう、自民党反主流派のドン福田赳夫、現首相の父上であった。
(方向が戻ってしまったぞい。まったく支離滅裂ですな)