パチャウリ氏

 7月5日にNHKで「温暖化とわたしたちの未来」という環境番組がやっていた。NHKの解説委員たちがそれぞれの分野から環境問題を議論していくというもので、なかなか面白かった。
 この番組の中でIPCC気候変動に関する政府間パネル)のパチャウリ議長のインタビューが流された。10分ほどの取材に応じてくれたそうで、その中でパチャウリ議長が持論をまくしたてている。とくに「セクター別アプローチ」については口を極めて否定した。
 このインタビューに対して、島津八生解説委員がこう言った。
「ICPPの議長がこんな発言していいのか。ICPPはもっと客観的であるべきではないか」
 確かに、IPCCの任務はこう規定されている。
《その任務は、二酸化炭素等の温室効果気体の増加に伴う地球温暖化の科学的・技術的(および、社会・経済的)評価を行い、得られた知見を、政策決定者始め広く一般に利用してもらうこと》
 あくまでも、IPCC関係者は客観的立場を守り、間違っても主観を交えた発言をしてはならない。違いますか。
だけどね、パチャウリさんは、IPCC議長という立場で科学的根拠もないままに、環境伝道師さながらにあちこちで自分のご託宣を撒き散らしているのだ。
「週間東洋経済」(2008.7.12)にもパチャウリさんのインタビューが載っている。その中でも、科学者の発言を超越して「先進諸国が削減目標をきちっと設定しろ」とか、「発展途上国に対しては開発の余地を認めろ」だの、政治の域にまで影響力を行使しようとしている。とくに母国であるインドに対しては好意的発言が多いのはどうかと思う。
 彼がIPCCの議長という立場でなければ何を言ってもいい。しかし、公的な立場を利用して、ある一方の意見を代弁するというのはいかがなものか。
 彼は菜食主義者でもあるという。別に菜食主義者でも構わないけれど、なんとなくこだわりだすと徹底的にこだわってしまうような性格が見受けられる。もしかしたら彼は環境原理主義者ではないのか?そんな人物が議長となってまとめ上げた報告書がどの程度、フラットなものか判りまへんで。