窓の開け閉めで口論

 一昨日のことだ。愛知県三河地方は曇り空だったが、東風が吹いていた。だから窓を開けておくと心地がよかった。
 午前10時、社内一斉放送で「空調を入れるので窓を閉めるように」という指示が出た。手のすいた課員が窓を閉める。その途端、風は止まり室内はむっとし始める。それに合わせたかのようにカビ独特の臭いが辺りに漂いだす。デリケートなワシャはタオルで鼻を覆いましたがな。少し我慢していたら、カビの臭いは消えた。でも、むしむし感は消えない。汗がじっとりと浮いてくる。
 1時間ほど我慢して、どうにも暑くてかなわないので、窓を細めに開けるとさわやかな風が室内に入ってくるではあ〜りませんか。これには環境担当のワシャは黙ってはおられまへん。すぐに社内空調を担当する庶務課へ電話しましたがな。
「外気の方が快適なのだが、敢えて電気を使って空調を入れるのはおかしいのではないか」
「一応今日から入れるということに決まったものですから……」
「決まったことだから、状況がどうあれ実施するということか?」
ワルシャワさんのところは暑いかもしれないですが、涼しいところもあるわけで……」
「今日は風があるから、窓を開ければどこだって涼しいわい」
「書類が飛ぶし……」
「そんなもの、文鎮で押さえんかい!」
 どうにも困った担当は、上司に代わった。
ワルシャワさん、空調を入れるか入れないかは温度だけじゃないの。温度も関係してくるんだ。1階では湿度で印刷機がジャムって困っているの。そういう意見もあるから勝手なことを言わないでください」
 ううむ、さすがに上司、なかなか理屈を言うじゃないか。
 でもね、どう考えても窓を開けた方が快適なのだ。この感覚には自信がある。ワシャは倉庫の奥から湿度計を掘り出してくると、室外と室内の湿度を測定したのだった。
 30分後、結果は出た。室外52%、室内65%だ。湿度は明かに外気の方が低い。この結果を庶務課に提示したところ、「ごめんなさい」と謝ってくれた。素直に非を認めたし、昼近くになって外気温が上昇をしているので、それ以上はとやかく言わなかった。
 でもね、決めたからそのとおりにしか実行しないということではなく、状況によっては臨機応変に対応するということが必要ではないだろうか……と思う今日此の頃であった。