正義を叫ぶ顔

 2〜3日前のことだ。本を読みながらテレビのニュースをチラチラ眺めていた。突然、画面にきつい表情を持ったオバサンが大写しになった。嫌悪が顔中にあふれている。どういう生き方をすればこんなに頑なな顔を作れるようになるんだろう。本を置いて暫しテレビを注視してしまったぞなもし。
 オバサンは記者会見をしていた。
いわゆる「従軍慰安婦」について偏った番組製作がなされた。試写の段階でそのことに気がついた上層部が急遽内容を改変させて放送したのだ。これに対し「改変には政治的圧力があった」「表現の自由に反する」として、某左団体がNHKを訴えていたというもので、最高裁はNHK側の自主性を認める判決を下した。
 この判決に対して「不当だ!」と怒っていたのだ。ご苦労様。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080612-00000010-maip-soci

 偶然というのは面白いものですな。ちょうどその時に読んでいたのが、谷沢永一『モノの道理』(講談社インターナショナル)だった。
 この本の中で、谷沢さんは正義をかざす人々をこう斬っている。
《これほど鼻持ちならない存在はありません。だれもが否定できないような「平等」「公平」「平和」といった錦の御旗を降り立ててバッサバッサと人を切りまくり世の中を糺そうとするからです。》
《彼ら正義の味方は平和であれ軍部糾弾であれ弱者保護であれ格差是正であれ、何かを盲信したら絶対にその「何か」を譲ろうとしません。》
《リベラルな平和愛好家のような顔をした「売国奴」には、ご用心ご用心――。》
 鬼のような形相で口角沫を飛ばして裁判の不当性を訴える女性を、谷沢さんの本が見事に解説してくれていたので思わず「プッ!」と吹き出してしまった。

 まあ、狂信者の皆さんは絶対に譲らないだろうが、今回の「NHK番組改変訴訟」に対する最高裁判決は、公平に見て妥当なものだと思う。
 四十を過ぎたら顔に生き様が出る。主義主張信念信条もいいけれど、あまりに偏ってしまうと顔が歪んでしまいますぞ。