野放しの病

 最近、テレビを見ていて不愉快になることがある。元々、低劣なバラエティ花盛りのテレビなど務めて見ないようにしているが、家族がテレビを見るのまで妨害するようなことはしない。仕方がないので軽い本を読みながら横目でちらちらと眺めている。
 わずかな時間しか見ていないのだが、それでもギャンブル関係のCMが目に触る。品のない地元パチンコ屋の宣伝、和田アキ子を使った競艇の宣伝、さすがに競馬(JRA)は金を掛けている。出演者も佐藤浩一、大泉洋小池徹平蒼井優と豪華なラインナップだ。西田敏行上島竜兵を使った宝くじギャンブルもこれでもかというくらい流され続けている。もう賭博のCMは野放し状態と言っていい。
 ワシャの記憶に間違いがなければ賭博というのは犯罪だったよね。
「刑法185条 賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。」
「刑法186条 常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。」
 賭博をやり始めると骨を折らないで儲かることがある。教養があって理性の強い人格者ならのめりこみはしないが、愚かでだらしのない人間は次第に真面目に働かなくなってくる。だから、持統天皇3年というから1300年前にも「双六禁止令」が出されたくらいだ。時の為政者は賭博の恐ろしさを知っていた。だから射幸心をあおるギャンブルをご法度としてきたのである。
 それがどうだ、今や博打の宣伝が公共の電波を使い大手を振って連日連夜、家庭団欒の場まで流され続けている。こんなことをしていると国が滅びるぞ。
 5月29日の朝日新聞に作家で精神科医でもある帚木蓬生さんが「ギャンブル依存症 病気と認識して治療を」という文を寄稿している。これによればギャンブルにのめり込むのは「病気」なんだそうだ。正式病名は「病的賭博」と言う。この病気は重篤で本人や周囲に及ぼす影響は深刻になる。そうだよね。「病的賭博」に罹患した両親を持つ子どもはパチンコ屋の駐車場で炙り殺されちゃうんだから。
 帚木さんの診療所を訪れた患者は100人、博打に使った平均費用が1.400万円、彼らのほとんどが消費者金融に負債があり、ヤミ金にも手を出しているそうだ。博打の対象は80%がパチンコ・スロットで、女性は全例がこの賭博の患者だった。
 今、手元にある愛知県西三河版のタウンページでパチンコ屋の数をあたってみた。なんとこんな限定をされた地域だけでも170軒の博打場がある。こりゃぁ愚かな人間が増殖するわけだ。そして国力はどんどんと落ちていく。嗚呼、已んぬる哉。