関口界隈の散策

 土曜日は内容の濃い有意義な1日だった。

 午前10時半、東京メトロ有楽町線江戸川橋で降りる。駅の一番西の出口を地上に上がると目白坂下である。神田川を渡って椿山崖下左岸沿いの江戸川公園を暫し散策した。
 足の鈍い低気圧が過ぎ、朝方にようやく雨が上がった。萌えはじめたばかりの緑樹に被われた散歩道は、都会の喧騒の中にある公園とは思えないほど清々しい。
 この色彩と湿度の感じは「小さな恋のメロディ」でダニーとメロディが恋を語る墓地のシーンを彷彿とさせる。
 ただ、公園の中ほどにある東屋は幾張りものビニールシートに占拠されていた。これではお年寄が散歩の途中で腰を下ろして休息することもかなわない。それに周囲の雰囲気がいいだけに、無粋な青色が台無しにしている。この浮浪者どもはなんとかならないものか。
 ええい忘れましょう。
 なるべく見ないようにして歩を進める。川沿いの坂を上がると冠木門が見える。椿山荘庭園の裏口だ。野地のようなゆるやかな築山や石組を見せる風景式庭園が垣間見えた。
 その先には関口芭蕉庵があって、そこを過ぎると駒塚橋の北詰に出る。庵と水神神社の間に細い急な階段が続いていた。胸突坂である。ひいこら言いながら登り切ると目白通りに出る。ようやく東京に戻ってきたという感じですな。
 野間記念館を右手に見て、東京カテドラル聖マリア大聖堂を左に眺め目白坂を下る。おお、椿山荘が見えてきましたぞ。椿山荘の正面玄関を過ぎ旧道に回りこんで、フォーシーズンズホテルに向かう。その2階に本日の昼食会の会場となる「みゆき」があるのだった。
 さて、庭園である。フォーシーズンズホテルから眺める庭は見事だのう。さすが作庭が好きだった山縣有朋が丹精込めて作っただけのことはある。ただ、明治の顕官としての山縣は幅のない狭量な人物だった。ワシャの中では鹿児島の海江田信義と並んで嫌いな明治人の代表である。でも、庭はいい。くどうようだけど。(つづく)