地球温暖化の流行 その1

 ある人から問われた。
地球温暖化っていつごろから言われるようになったんですか?」
 え?いつからだっけ……
 だから今(午前4時半から)、必死になって『ベーシック条約集』(東信堂)を紐解いていますぞ。それによれば……
 1972年の「国際連合人間環境会議の宣言(人間環境宣言)」の中には「地球温暖化」なる文言は出てこない。1980年代に、オゾン層の破壊防止のための条約や議定書は締結されるのだが、その中にも「地球温暖化」という言葉はなかった。
 条約などに初出するのは、1992年5月9日採択の「気候変動枠組条約」だと思われる。この前文で《人間活動が待機中の温室効果ガスの濃度を著しく増加させてきていること、その増加が自然の温室効果を増大させていること並びにこのことが、地表及び地球の大気を全体として追加的に温暖化することとなり……》と記載されている。
 また手元にある気象、環境関係の本をかたっぱしから当たってみる。ワシャは朝から何をやっているんだろうか?
 1984年発行の高橋浩一郎『気象なんでも百科』(岩波ジュニア新書)には、「大気の温室作用」という項があるが、地球温暖化についてはまったく触れていない。これ以降だな。
 1988年発行の石弘之『地球環境報告』(岩波新書)でも、生態系の崩壊、消滅する熱帯林、砂漠化、土壌流出、大気汚染、酸性雨などについての記載はあっても、地球温暖化という語句は見当たらない。
 1989年になるとアメリカ大統領がレーガンからブッシュ(パパ)に代わる。これをきっかけにして環境全般についての関心が高まってくる。週刊誌『タイム』がキャンペーンを張ったことも相俟って環境問題のうねりが動きはじめた。これが1990年4月22日、ニューヨークで開かれた環境保護大集会「アース・デー」につながっていく。このイベントを組織したデニス・ヘイズらがまとめたものに「バルディーズの原則」がある。10項目にわたって企業に環境保全の責任を求めているのだが、この中にも地球温暖化という項はない。う〜む、これよりも後だな。
 なお、「バルディーズの原則」については、岡島茂行『アメリカの環境保護運動』(岩波新書)を参照していただきたい。
(下に続きます)