福知山線の最敬礼(2)

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 この惨事で大活躍をした会社がある。マンションの南東にある「日本スピンドル製造」という町工場だ。あの日の昼のニュースで流された映像に、白っぽい作業着姿の人が何人も事故現場で立ち働いているのが映っていた。最初はJRの社員かとも思ったがどうも雰囲気が違う。後に彼らが日本スピンドルの社員だということを知った。

 事故直後のことである。大きな音を耳にした日本スピンドルの社員は音源を確認して驚愕し、すぐさま会議中だった社長に直訴したそうだ。
「列車がマンションに突っ込んで大変なことになっています。私たちが救助活動をしなければ多くの命が失われます。そうなったら一生後悔すると思うので、仕事を中断して救助活動に当たらせてください」
 直訴した社員も偉かったが、社長も偉かった。すぐに全社員を食堂に集めると、班編成を行い防災救援命令を出したのである。この判断のお蔭でどれほど多くの魂が救われただろうか。ワシャは特急北近畿の中で南に見える工場群に向って最敬礼をした。ありがとう。日本スピンドルの皆さん。