ハンケチとハンカチ その2

(上から読んでね)
 こんなこともあった。社会の授業中に教師が「町と山村で、農作物がたくさん獲れるのはどちらでしょうか」と質問した。
 ワシャは真っ先に手を挙げて「山村どえす」と答えた。
 先生は「そうかな?では他の意見の人」と別の子どもに振った。ワシャの町でも田舎部に住むその子どもは「町で〜す」と答えおった。
「あほか!」
 と、ワシャは思いましたぞ。だってさ、ワシャはJR沿線の中心市街地に住んでいるが、農地などどこにもない。ところが母方の親戚が岐阜や長野にいるけれど、遠くに恵那山や南アルプスを望める山の村は家の回りを田や畑で囲まれて、そこに行けばナスでもトマトでもキュウリでもなんでもあった。
 どう比較しても「街」には何もなく、「山村」には何でもあった。ワシャの答えは絶対に正しい。
 しかし、教師は「はい、Sさんの言った『町』が正解です」といとも簡単に結論付けた。
「違うよ!」とオレは声を上げた。そして上記のことを淘々とまくしたてた。でも教師は「きみは間違っている。町の農業生産高の方が大きい」と言って譲らない。でもね、どうしてもワシャにはこの教師の言っていることが理解できなかった。「街」では農業なんかやっている人間はいないのだ。
 今になれば、この教師とワシャの意識のずれがよく判る。ワシャにとっての「街」というのは市の中心にある人口密集地のことであり、教師の言う「町」というのは、市街地周辺に広がった田園地帯も含めた「市域」のことだったのだ。
 だったらそう言えよ。はっきり言わないから小学校3年生は誤解してしまう。このあたりから教師への不信が増殖を始めてしまった。