お好み焼き

 まだ、意識は鯉川筋にいる。昔日は、六甲山系の再度山に端を発した細川が太子の森を抜け、一気に大阪湾に陥ちていたんだろう。今は開発が進んで、様々な店舗が並ぶ繁華な通りになって水流のあった形跡すらない。『角川日本地名大辞典』で調べたのだが、「鯉川」という地名は出てこなかった。『日本国語大辞典』には「恋川」という項があったが、この語との脈絡はあるまい。純粋に、鯉が泳ぐ小河川が神戸郷にあったのだろう。あるいはこのあたりの地形からすれば、鯉が勢いよく跳ねる滝川だったかもしれない。

 そうそう、お好み焼き屋の話じゃった。
 JR元町駅東改札口を出ると南北の広い通りが鯉川筋である。左側の歩道を30mも上れば、小汚い入口の上に「お好み焼きBon鉄板焼」という看板が掛かっている。そこを潜ると地下に下りる階段があって、いかにもいかがわしいが、その階段を下りきるとやっぱり小汚い引き戸があって、そこを手でこじ開けて店に入る。店もどことなく古錆びた雰囲気だが、ワシャは食いものに関しては妙に鼻が利くんですな。まずはオーソドックスなお好み焼きを注文して、生ビールを飲みながらいただきましたがな。厨房で焼いて目の前の鉄板に運ばれてきた分厚い円盤にはほどよく焦げ目がついていて、これが香ばしくてビールに合うんですな。ついでにネギ焼きのスペシャルを頼んだのだが、これはたっぷりネギの中に神戸牛(?)のスライス肉がしきつめらている高級な(と言っても1000円程度)ネギ焼きで、こちらも美味でしたぞ。
 ぜひ神戸においでの際は立ち寄ってみてください。