政治家の気概

 4月19日に「政治家は命を惜しんで防弾チョッキなど着込むんじゃない」と書いた。
http://www4.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=427365&log=20070419
 実は、大分市長選に出馬している現役の釘宮磐氏(59)が18日の朝から防弾チョッキを着ているという笑い話を読んだからだった。投票日前だったので言わなかったけど、この人、臆病者と言うか、お調子者と言うか、こんなのを首長としていただいているようでは大分市の先行きも危ないかもね。
 釘宮氏に気概があるなら、支持者から「防弾チョッキをぜひ着て欲しい」と言われても、こう言えよ。
「あなたのお気持ちは大変ありがたい。しかし、私は言論で立つ政治家である。不当な暴力や脅しに屈するわけにはいかない。死んでも弱みなどみせられない」
 ま、県議、参議院議員衆議院議員という政治屋の王道を歩いてこられた氏には、絶対そんなことは言えないだろうけどね。

 氏は知っているか。明治の元勲大久保彦左衛門のことを……違った、大久保利通だった。
 明治11年5月14日のことである。東京紀尾井坂を、一台の馬車が先駈けの馬丁と御者のみを連れて太政官に向かっていた。車中で書見をしているのは新興国日本の絶対権力者大久保卿である。彼は前年、長年の盟友西郷隆盛西南戦争で葬っていた。このため全国の過激士族から命を狙われている。この無防備さを前島密かが忠告をしたのだが、大久保は「天が自分を加護してくれるかどうかだけである」と言って取り合わなかった。
 そして暴漢に襲われて非業の死を遂げるわけだが、これぞ男、これぞ政治家と末代まで語り継がれるのである。ひるがえってたかだか地方都市の首長風情が、それも選挙戦の演説をぶつ程度の時に、防弾チョッキを着用するとは笑わせるじゃないか。もう少し男を磨いたほうがいい。

 市長に気概がなくとも大分市職員はまともらしい。宮城谷昌光さんが『古城の風景』の中でこんなことを書いていた。
宇佐市役所の人々は、静岡県からきた旅行者にたいして、じつに親切であった。大分市庁でも、みごとに応対してくれたばかりか、
「良いご旅行を――」
と、声をかけてくれた。大分県の良さを痛感した私は、
――住むなら、大分県か。
と、おもったほどである。》
 宮城谷さんがほめるようないい職員を潰すなよ、「防弾チョッキ市長」さん。