戒名

 坊主に50万円せしめられたのがどうにも納得できなくていろいろ本を入手して読みましたぞ。加藤廣若桜木虔『長い戒名ほど立派なのか』(ベスト新書)、桜井秀雄監修『よくわかる仏事の本 曹洞宗』(世界文化社)、中野東禅『曹洞宗の常識』(朱鷺書房)、新井満千の風になって』(講談社)、田上太秀『道元のいいたかったこと』(講談社)、平川彰『現代人のための仏教』(講談社新書)、渡辺照宏『仏教』(岩波新書)、『日本仏教宗派のすべて』(大法輪選書)。
 なんだか関係のない本も混じっているが、それで解ったことは、やっぱり50万円は高かったということなのじゃ。浄土真宗は戒名料8万円だそうだ。
《お布施というのは、通夜・葬儀の儀式で受けた法施に対して財貨で応えるわけですから、いくらでなければならないといった決まりはありません。事実、お寺に相談しても「お志でけっこうです」という言葉が返ってくるだけです。》
 と『よくわかる仏事の本 曹洞宗』には書いてあるが、そんなことはなかったぞい。件の坊主、相談したら「50万円也」と即答した。
『長い戒名ほど立派なのか』の著者は、現在の「葬式仏教」「ぼったくり仏教」に対して辛辣だ。
《仏教の堕落の最たるものが、坊主が金銀の袈裟、色鮮やかな衣を身に纏って“葬式仏教”でしこたま稼ぐ姿である。》
《戒名や法名がなければ死者が成仏できない、極楽浄土に往生できない、などというのは、後に世が下がってから、無知な民衆をカルト的に洗脳して金儲けを画策する僧侶や、それと連んだ葬儀屋の勧誘、宣伝文句にすぎないと言うことができます。》
 若桜木虔は「それなら自分で戒名を作ったらどうか」と提案しているが、これがちと難しい。あるいは数万円でお手軽に戒名を作ってくれる団体もあるのだが、自作したり別のところで作ったりすると、宗派がその遺骨の供養を拒否するということになるのである。そうなると先祖代々本山に納骨していたものが、自作でつけた人のみ本山に祭られないということになる。それがワシャならいいけれど、自分の尊属ではやはりやりにくい。両親や親族に相談すれば、「仕方なかっぺぇ」と丸めこまれて、若桜木さんの言う「我利我利亡者ぼったくり坊主」を儲けさせることになる。
 賢明な若手の僧侶の中からは、こういった宗教を金銭に置きかえる風潮を懸念する者も出てきた。
http://www2.big.or.jp/~yba/QandA/01_06_22.html
 仏教青年は「宗教にも構造改革を」と言っている。こういった真面目な坊主に引導を渡してもらいたいものじゃ。