お茶を手にして転ばぬように

 大した話ではないんだが、イラク関連本を探していて、西研ヘーゲル・大人のなりかた』(NHKブックス)という本を手に入れた。
 たまたま近所の古本屋の書棚を「イラクイラクイラク……」と物色していたら「ヘーゲル」という文字が視線の端に触れたのじゃ。先日、梅原猛の「ヘーゲルによる国家の聖化と戦争の肯定」という論文を読んでいたので、脳裏のどこかに「ヘーゲル」という単語がへばりついていたんでしょうね。だから思わず買っちゃいました。
 家に帰って、居間のコタツに入ってその本を読んでいると、嫁がお茶をいれて持ってきてくれた。湯呑みをワシャに渡しながら、嫁が本を覗き込む。
「なに読んでるの?」
 答えるのが億劫だったので本の表紙をひょいとかざした。嫁は表紙を眺めながらこう言った。
「童話を読んでいるんだ?」
 え?何を言っているのか解りませんぞ。
ヘーゲルとグレーテルね」
 ドッヒャー!
 うあっ!ちちちっ!