本の痕跡

 仕事帰りにブックオフに立ち寄る。そこで一冊の本を見つけた。瀧本敦『花ごよみ花時計』(中央公論社)、昭和57年第4版発行となっている。瀧本敦なんていう人はまったく存じ上げない。巻末の経歴を見れば、京都大学農学部の教授で専攻は植物生理学ということである。本の中身はというと、アサガオの観察記録、オオマツヨイグサの実験、生体時計と開花時刻、開花期を決める要因などなど、ワシャの最も不得意とする分野の話ばかりだ。普通なら絶対に買わない類の本と言っていい。
 ところが買った。なぜか。それはね、ワシャは本に残された痕跡が好きなんですね。たまたま手に取った『花ごよみ花時計』をパラパラっと繰っていると、1枚の納品書が出てきた。宛名はなんとワシャの同級生の父親となっている。日付は23年前、納品された本は7冊、う〜む、あのお父さん、読書家かもしれない。
 この1枚の納品書が挟まっていたお蔭でこの本を買うことになったのじゃった。その他に、中島誠之助『ホンモノの人生』(焼物、骨董関連の本に目がない)、桑田忠親『定本千利休』(歴史ことに戦国史が好きなのじゃ)、清家清『やすらぎの住居学』(建築にも興味がある)、渡辺淳一『ものの見かた感じかた』(目次を見ていたら「作家と創作」という文字が目に入ったから)所ジョージ『私ならこうします』(所さんの生き方に共感しているので)をカゴに入れレジに向かった。その途中、ワシャは重大なことに気がついた。な・なんと、6冊では23年前のお父さんに買った冊数で負けてしまうではないか。ワシャは棚に引っ返して、八幡和郎『江戸300藩バカ殿と名君』(光文社新書)と中島康夫『忠臣蔵討ち入りを支えた八人の証言』(青春出版社)をカゴに入れた。これで合計8冊だ。勝った……(アホですな)
 さて、早速、読み始めることにしようっと。