香嵐渓(こうらんけい)

 愛知県東加茂郡足助(あすけ)町で法事があった。休日出勤の振替休日が山のようにたまっているので、それを使って田舎町に行ってきた。足助町はすでに豊田市に併呑されて豊田市足助町になっているのだが、どうしてもこの山間の町を豊田市の一部として理解できない。やっぱりワシャの中では、ここは加茂の山里でいいということにしよう。
 昼過ぎに法事は滞りなく終わった。田舎のことなので昼食を兼ねて一杯やりましょうということになるわけだ。ワシャは夕方までに自宅に戻らなければいけない。形だけ受けて、「せっかく足助に来たんで香嵐渓に行ってきます」と言い訳をして席を立った。飲めないわけではないので、目の前で酒盛りをされた日にゃあ堪ったもんじゃないですからね。

 雲の多い日で、陽光がかげると急に寒くなる。ジャケットの前を合わせて川沿いの道を香嵐渓に向かった。
 その香嵐渓である。
豊田市の中心部から東へ車で走ること30分、山また山の奥三河の西玄関といった地勢の足助町香嵐渓はある。町は東西に流れる足助川沿いに開けている。と言っても巾が200〜300mの谷あいに肩を寄せ合うようにして固まった小さな町なのだ。その町の南に飯盛山というお碗を伏せたような山があり、その周辺が「香嵐渓」と呼ばれ、紅葉の名所となっている。
http://www.mirai.ne.jp/~asuke/kourannkei/kourannkei2.html
 何年か前に訪ねたときはこんなでした。でも今年は冷えこみが甘かったせいか、全体に色目がくすんでいる。鮮明な赤、黄ではなく、茶、黄土、朽葉の色だった。地元の人に聞いても「11月の初旬は暖かかったからね」と言うことらしい。
 確かに観光客のごった返す飯盛山麓の紅葉は汚かった。でもね観光客があまり入ってこない飯盛山を息を切らして登れば、鮮やかさはないが、見渡す限り全山、アースカラーをまとった森閑とした素晴らしい空間に身をゆだねることができるんですぞ。登山道の途中に木のベンチがあったので、ちょこっと寒かったがそこに坐って思わず読書をしてしまいました。本は、道元の弟子の懐弉(えじょう)が書いた『正法眼蔵隋聞記(しょうぼうげんぞうずいもんき)』(ちくま学芸文庫)じゃ。なぜこんな本かというと、飯盛山の西の麓に香積寺(こうじゃくじ)という古刹があるのだ。そこの宗派が曹洞宗、ワシャ家の宗旨も曹洞宗なのでこれを選んだというわけである。
 ああ、字数が尽きた。この続きは明日のココロなのだ。