竜馬がゆく

 司馬遼太郎の『竜馬がゆく』の中には、竜馬が酒を飲む場面があちこちに出てくる。
《竜馬はその日の夕刻、藤兵衛のなじみらしい堀江町の船宿で酒を飲んでいた。》
《そのうち十五日の月が出た。
 それが水に映り、対岸の材木町家並が淡い月光のなかに浮かびあがって、夢のように美しい。竜馬はしたたかに酔った。》
《嗤うべきことかもしれないが、竜馬は離れ座敷に入ったとたんに、徳利を見つけ、そのあとはお冴を前にして大酒を飲んでしまった。》
 このように竜馬は大酒を飲むのだが、にも関わらず二日酔いになったという話は書かれていない(あたりまえだけど)。よほど肝臓が強かったんだね。

 さて竜馬,午後10時にお冴のところに忍んで行って大酒を飲んだあと、いい雰囲気になり、さあ床入りという刹那、嘉永7年11月4日の東海・東南海地震の連動型に襲われたという話になっている。ただこの地震、実際には4日の朝に発生しているので、司馬さんの話は間違いということになる。
 でも朝からコトをいたすっていうのもなんだから、知っていながら夜に起きた地震ということにしたんでしょうね。
 いやー、しかし大作家の小さなミスを見つけるとなんだか嬉しいものなのだった。めでたしめでたし。