業界では有名な演出家が、自作の映画に出た沢尻エリカについてこんなことを言っている。
「原作での沢尻さんの役はもっと野暮ったくて、不細工なはずなんです。それが都会に出てあか抜け、主人公との愛を貫くことで美しくなっていく。なのに、沢尻さんは最初からどうやったってきれい。メイクを薄くしたりとかめがねかけたり、髪を束ねたりいろいろやったんですが、逆にどんどんかわいくなってしまって……大失敗です(笑)」
この演出家、何を言っているんだか。不細工な女が美しく成長していくということがドラマの主軸にあるなら、なんとしてでもおもいきり不細工にしてそこからの昇華を考えるのが演出家だろうが。それを「どんどんかわいくなっちゃって、いやぁん(笑)」ってお前はバカか!監督と役者にやる気さえあれば、どんな絶世の美女でも不細工にできるわい。世界の妖精オードリーを見よ。マイ・フェア・レディのイライザは本当に臭そうだったぞ。それにあのだみ声は天下一品じゃった。オードリーは映画の冒頭に不潔で無教養で下品な下町の花売り娘に成りおおせていたぞい。
要は女優のやる気である。沢尻に不細工になろうとする気持ちさえあれば不細工になれる。それができないというならば、沢尻はアイドルではあっても女優にはなりきれていないということだし、演出家は演出を止めたほうがいい。
(撮影現場で沢尻は横柄な態度をとっているそうだが、この程度の役者魂でそっくり返っていてはいけない。『楢山節考』の坂本スミ子を見るがいい。47歳の時に70歳の老婆の役をやるために自らの歯を抜いてまで役になりきったんだぞ。威張るのは本物になってからでいい)
平成15年3月6日号の週刊文春に倉本聰が『もはや日本のドラマから「役者」は絶滅した!』という文章を寄稿している。
冒頭の演出家に是非読んでもらいたい。
「今の日本のドラマは幼稚化の極みにありますね」
「大人の鑑賞に堪え得るドラマが無くなった原因の第一は、役者がいなくなったこと」
「第二は、プロデューサーやディレクターが素人すぎてシナリオの質が低下したこと」
役になりきれない女優と、役になりきらせれない演出家、これが映画を衰退させて逝くんだね。なんまんだぶなんまんだぶ……