プロフェッショナル その2

(上から読んでね)
 最後に2人のプロフェッショナルのことを書きたい。司馬遼太郎谷沢永一である。司馬は小説を、「絶対虚構を中心にすえるべきものだ」と言いながらこう続ける。
《が、私の場合、絶対虚構を据えるのではなく、無数の歴史的事実という火山灰を積みあげ、最後に出きる火口のような空虚な部分を空虚なままにして、読み手の洞察にまかせた。その部分だけが真実という絶対虚構のつもりだった。
谷沢氏はこのような創作の一切を見ぬき、火山灰の土質まで検分して、精密な割符をつくって、みごとに符合させてくれたのである。》
 特殊だが本物の小説家と孤高だが本物の書誌学者との緊張感あふれる交際は、谷沢永一『執筆論』(東洋経済新報社)に詳しい。