アルバイト曼荼羅(カメラ屋)その2

 吉山カメラ店の新装オープンは金曜日だった。このためワシャとワシャの友人のタドンは赤レンジャーとヘロキングに変身するために、学校を休まなければならなかった。まぁいいか。
 どっちが赤レンジャーでどっちがヘロキングを被るかでもめた。どう考えたってすらっと背の高いワシャが赤レンジャーだと思うのだが、短躯のタドンも赤レンジャーをどうしても被りたいと譲らない。
タドン「ワシャ、頼むよ。おれは昔から赤レンジャーのファンだったんだ。おれにやらせてくれ」
ワシャ「だめだ、タドンだとタイツが余っちまうじゃないか。そんな赤レンジャーいないって」
タドン「細かいことを言うなよ。なんだかヘロキングじゃぁ格好悪いじゃねえか」
ワシャ「口がでかくてさ、見ようによっては格好いいとおもうよ」
タドン「そ・そうか?」
ということでワシャが赤レンジャー、タドンがヘロキングと決まった。
 やってみるとこれがなかなか楽しいんですな。上っ面はテレビの人気者なんですから子どもにはきゃあきゃあ言われるし、女の人に「一緒に写真とってくださ〜い」とか頼まれたりして、悪い気はしない。反対にグロテスクなヘロキングは大変だった。だいたいキャラクターが嫌われ者である。幼い子には泣かれるワ、近所のクソガキには蹴られまくるワで、具のタドンは本当にヘロヘロキングになっていた。赤レンジャーにしておいてよかった。
 午後に入っても客足は落ちなかった。常にカメラ店の前は黒山の人だかりである。2時を回って客層が変わってきた。高校生が増えたのである。タドンがこのアルバイトのことを口を滑らせていたので、何人かの同級生もからかい半分で顔を見せた。ヘロキングにタドンが入っているのを見つけると、チョップをしたり羽交い締めをしたりして遊んでいく。赤レンジャーで本当によかった。
(下に続きます)