アルバイト曼荼羅(カメラ屋)その3

(上から読んでね) 
 4時を回って、下校の高校生の数もめっきりと減ってきた。契約は5時までだから、もうちょっとだ。最後の気合をいれてヘロキングと格闘していると、客の中に中年の男が混じっていた。よく見ればそいつはワシャの高校で悪名高い生徒指導部の教師のゲタ山だった。あいつ、カメラが趣味だとか言っていたから、覗きに来たんだ。君子危うきに近寄らず。ワシャはスーッとフェイドアウトしていくのだった。
 タドンはというと、着ぐるみを被っていることで気が大きくなっているんだろうね。カメラを物色しているゲタ山にちょっかいを出しているではないか。バカ、止めれ!
ゲタ山、怒気を込めてヘロキングを睨んだ。そしておもむろにヘロキングの上顎と下顎をつかむと、ぐいっとヘロキングの口をこじ開けた。
「タドン!」
 教師はヘロキングを本名で呼んだ。
「授業をサボってこんなところで何しているんだ」
 ヘロキングの中から「ヒェェェェェ」という情けない声が聞こえる。タドンのヤツ、1週間くらい謹慎を食らうだろうな。くれぐれもワシャのことを口外するんじゃないぞ、と念じながら店の奥に消え去るワルシャワであった。めでたしめでたし。