首長の名

 今日の朝日新聞「声」欄。自治体の長があちこちに自分の名を刻んだ碑を残したがるが「なぜだろう」と疑問を呈した投書があった。
 全国に自治体の長(都道府県も含む)は1889人存在する。随分といるんだね。それだけいれば玉石混淆、バカもいるし立派な人物もいるだろう。まぁ賛否はあろうが石原都知事や田中前長野県知事はまともな方と言っていい。得てして田舎の市町村では地元の有力者で野心家が首長になることが多い。あるいは温順な常識人が地元の政治好きオヤジ連に担がれて頭に立つこともある。だから周囲を見まわしても銅像にしたり肖像にしたりするほどの人物は皆無と言っていい。
 だいたい総理大臣を森喜朗程度の人物が務められるんだから、自治体の長など少々体が丈夫で新聞が読めれば誰でも務められる程度の仕事なのである。ワシャの住んでいる町の首長だって過去を辿れば何人もいるけれど、大した人物はいない。大したことがないから碑に名前を残したがるのである。バカの証明と思えば腹も立ちませんぞ。
 長野駅の県立図書館前広場に何代か前の長野県知事の等身大銅像が据えられている。きっと顕彰してあるのだろうが、ワシャには晒し者にしてあるとしか見えなかったですぞ。
「声」の筆者は言う。
《全国にはいまだに、あちこちに名を残したい長が多くおみえになるらしい。私は辞退する人にこそ賞賛を送りたいと思うのだが。》
 それでいいと思うよ。真摯な人には賞賛を、そして詰まらぬ名を碑に残したり、馬鹿ヅラを後世に残した首長には嘲りの視線を送ってやれば。

 原健三郎という衆議院議員がいた。彼は1996年の衆議院議員選挙で当選すれば勤続50年を勝ち取ることができ、そうなると衆議院の玄関に胸像が掲げられるのである。だから原健は妻とともに「銅像を建てさせてくれ」と土下座をしてまわったのだそうだ。それにしても原健、「憲政の神様」と呼ばれた尾崎愕堂や「クリーン三木」と言われた第66代総理の三木武夫と肩を並べるつもりなのだからおこがましい。
 衆議院の議長まで勤めあげた大人物(笑)でもこうなのだから、チンケな自治体の長あたりが詰まらぬ名前にこだわって奔走するぐらいかわいいものではないか。嘲笑って許してやってほしいものだ。