モテない男

 知人にSという四十男がいる。彫りの深い顔立ち持ち、筋肉質で背が高く生真面目な男だ。地元中堅製造業の専務でもあり名士と言っていい。金もそこそこ持っている。
 そんな男なのだが、これがなぜか女性にモテない。いろいろ仲立ちをしているのだがうまくまとまらないのである。
「なぜだろう」とずっと悩んでいた。それが日垣隆『刺さる言葉』(角川oneテーマ21)を読んで、目から鱗が落ちた。
 日垣さんが言うモテる男の条件は5つある。
1 話をしていて退屈しない。
 だめだ。Sの話は面白くないし、話題が貧困だ。
2 よく褒めてくれる。
 Sは生真面目な性格だけに、見え透いた世辞を言うような男ではない。
3 ケチでない。
 ケチではないが、能動的に大盤振る舞いをするといった類の豪傑ではない。
4 意外性がある。
 生真面目な男だけに意外性はない。
5 清潔である。
 清潔ではあるが、服のセンスはない。

 この条件を読んで、「ああ、Sはモテないな」と得心させられてしまった。顔立ちがいいとか、背が高いとか、スマートであるといったことは、大した問題ではないらしい(ちょこっとほっとしたのじゃ)。
 そういえば小男で猿顔の火野正平や、変な顔で危なそうな中村獅童はモテるよね。彼らは見事に5条件に合致している。よ〜し、ワシャも頑張るどー!(って何を?)

 それはさておき、『刺さる言葉』はなかなかためになりますぞ。現代を生きるための言葉の定義が270も網羅されており、巻末に索引があるのもうれしい。座右のレファ本としてもいい一冊である。