昨日の続き

 大府市立図書館で20冊ほどの『エコノミスト』に目を通しただろうか。巻頭の「敢闘言」で日垣隆さんが落語の話を書いているのを見つけた。その中にこんなフレーズがあった。
立川談四楼の「浜野矩隋(のりゆき)」をライブで聞いたその日の夜、寝る前に志ん生のMD(知人から私家版150枚ほどを譲り受けた)の中から適当に1枚をかけたら奇遇にも「矩隋」が流れた。》
 ここに出てくる「浜野矩隋」という噺のあらすじはこうだ。

 先代に比べて腕の落ちる彫師の矩隋はある日唯一のお得意先となった若狭屋に彫りあげた小柄を持っていったが、その出来があまりにひどかったので、ちょうど酒を呑んでいた若狭屋に「死んじまえ」と罵しられる。矩随はしょげ返って家にもどり、母に伊勢詣りに行くと嘘を言い大川へ飛び込んでしまおうとするが、母はそれを見破って、死ぬのは仕方ないけれども、せめて形見に阿弥陀仏を一体彫ってくれと頼むのだった。
 矩随は水ごりをし、七日七晩、飲まず食わずで一心不乱に仏を彫った。完成した仏を見て、母は、それを若狭屋にもっていけ、値を聞かれたら五十両がビタ一文かけても売れないと言いなさいと言い含め、送り出した。阿弥陀様を見た若狭屋は、先代の作がまだ残っていたと勘違いして喜んだが、それが矩随の作と聞いて、あっと驚いた。このことで開眼した矩随は、先代に劣らぬ名人となる。といういい噺である。

 実はそんなことはどうでもいい。問題は日垣さんの文章の中にあった「知人から譲り受けた私家版MD150枚」である。そのMDは昨年の9月に日垣さん主催の「通販講座」で講義の一環として実施された「オークション」に出品されたシロモノですぞ。それを日垣さんとワシャが競り合ったのだが、最終的に資力の差でワシャが負けてしまったという曰くつきのMDなのじゃ。
 う〜む、いまだに悔しいわい。