書評

 勝谷誠彦さんのブログで齊藤寅『世田谷一家殺人事件 侵入者たちの告白』草思社について触れ、「必読の書」「警世の書」と絶賛しておられた。勝谷さんに薦められるまでもなく、この猟奇事件については世間の耳目が集まっていたので、駄本にせよ、早速、手に入れて読んだ。
 読み終わって「ふ〜ん」という印象だった(←どういう印象じゃ!)。内容は、事実とすれば衝撃的なものだったが、本のあちこちにマヌケな文章が混在していたので「?」とも思っていた。
《「そう、あなたの探している、例のベトナム人大脱走した若者……」
私は思わず笑ってしまった。「大脱走」とは……。しかし、「大脱走」から連想して、私は、ついハッとなった。脱走ということは、とどのつまり、犯罪者ということになりはしないか……》
 ならないって。
《そのコーヒーショップでのインタビューは、じつに二時間半に及んだ。その間客が十二、三回は入れ替わったはずだ。ド・シアン・レンは八回、クァオ・ヴァン・チュー氏は三回、濃いエスプレッソをお代わりした。ベトナムからの重要輸入品のなかにコーヒーがあることを、そのとき不意に思い出した。》
《客が十二、三回は入れ替わったはずだ》は長時間にわたって取材をしたということを強調するためのものだろうが、そんなに入れ替わったら1組あたりの滞在時間は12分で、随分と忙しい店だったんだね。八回もお代わりしたって、そりゃ飲みすぎでっせ。それを見て、「ベトナムの産品にコーヒーがあったことを思い出した」って、あなた、取材に集中しなさいよ。
 そんな疑問を持ちながら、昨夜、読み終えた。今朝のブログは、その本を下敷きにして、「渋谷女子大生誘拐事件」を絡めながら、外国人犯罪について書くつもりだった。ところが、今朝、日垣隆さんの「メルマガ」が届いており、それに目を通したら、な・なんと、この本が96莫迦(年間ワースト3)として認定されていたのじゃ。
《私などゲラゲラ笑いっぱなしで、周囲にも「笑い方」のコツを教えてあけると、必ずヒーヒー言っています。》
 そう言われて、読み直すと、ううむ……笑える。

 まだまだワシャの本の読み方は甘い。勝谷さんに「いい」と言われれば、そのように読んでしまうし、日垣さんに「だめだ」と指摘されれば、そうだよね、と思いながら読んでしまう。結局、読書に自分の視点と言うものがないということを自覚させられた一冊だった。(悲し)