地震対策

 線路がわずか5cm隆起しただけでこの騒ぎだ。この程度のことでも30万人を超える人間に影響が出る。もしこれが首都直下型の地震だったらその混乱は想像を絶するに違いない。
 これは名古屋圏でも同様だ。名古屋の中心部で直下型の地震が起きれば大混乱になるだろう。一説では帰宅困難者が90万人も発生するというから大変だわさ。この人たちをいかに早く帰宅(分散)させるかが名古屋市の喫緊の課題となっている。だって市民の世話だけでも大変だというのに、市外から流入している90万人も余分に面倒をみるなんて、「やなこった」ということなんでしょうね。
 ということで名古屋市は早々に帰宅困難者を支援するための「マップ」を作った。ロードマップに支援センター(コンビニ、ガソリンスタンド、郵便局)や道路の危険個所を記載したものである。県も愛知県全域でマップを作った。
 そこまではよかった。でも何をとち狂ったか愛知県はその「マップ」を全県下の自治体に作成を命じたのである。それも補助金付きで。
 おいおい、帰宅困難者が発生して困るのはどう考えても名古屋市だけだっせ。名古屋は大混乱だろうが、時間が経過し90万人が四方八方へ散らばってしまえばその混乱が西三河刈谷安城まで及ぶことはない。にもかかわらず愛知県は幸田町高浜市にも「マップ」作成を強制しているんだよね。
 これはどう考えても「羹(あつもの)に懲りる前に膾(なます)を吹く」ということではないのか。
 そのことを県の担当者に問うてみた。
 県の担当者曰く「帰宅困難者の問題は名古屋だけとは限りません。例えば豊田や岡崎を考えてください。周辺市町から多くの人が通勤している。その人たちが地震となればみんな帰宅困難者になるんですよ。マップの作成はそのためでもあるんです。エッヘン」
 なるほど、そういえば近隣市相互の通勤通学者は確かに存在する。ワシャ家の子どもたちも豊田や岡崎の高校に通っているから他人事ではない。でもワシャの息子たちはマップなんぞなくともさっさと歩いて帰ってくるだろう。ワシャの友人の何人かも周辺市のオフィスや工場に勤務しているが、みんな日ごろ通いなれた道をさっさと歩いて帰ってくるに違いない。通勤路を熟知しているから「マップ」なんて要らないのだ。
 でも愛知県は今年度、全市町村にマップの作成を強要する。西三河の市域の小さな自治体はいったい誰のために「帰宅困難者支援マップ」を作るのだろうか。県の担当者のために作ることだけは間違いないのだが……