雪明かり

 雪は未明に止んだ。
 日中はにわか雪、雪しぐれ、風花などという風情のある降りかたではなくて、風雪、吹雪、ときにはブリザードのような様相を呈した。ブリザードというのは一般的には暴風雪といい、今回の異常気象では西国各県にこの警報が発令された。
 それでも静かになってしまえば雪景色はなかなかおつだ。まず深夜だというのに明るさがあるよね。「蛍のひか〜り 窓のゆ〜き・・・」なのである。
 古来より、雪、月、花は日本の風土に彩りを添えてきた。牡丹雪、小米雪、粉雪、綿雪、大雪、深雪、小雪、しずり雪、ちらちら雪、暮雪、雪の結晶が六辺に凍るので六花(むつのはな)ともいう。穏やかに山に降る雪は来春の豊かな水を約束する天の恵みでもある。
 しかし今回の雪は狂っている。南国の鹿児島までを雪景色に変えてしまってはいけない。多くの人もこの気象の異常さに気がついたようで、テレビのインタビューにもっともらしい顔をして「気候が変動している」とか言っている。
 もうすぐクリスマスだ。日本人で禅宗に帰依しているワシャにはまったく関係のないイベントだが、なぜか多くの日本人が浮かれ騒いで街じゅうにイルミネーションを点燈しまくって嬉嬉としている。
 かたや異常気象に嘆息し、こっちで晧晧と光り輝くイルミネーションに感動しているのである。あまりにもバカげているので文句をいうのもアホらしいが、環境都市宣言をしている自治体が、夜遅くまで施設に明かりをつけてクリスマスイベントをしている矛盾に、なんで誰も思い当たらないのだろうか。
 生活に関係のない明かりは消せ!
 なんでみんなは人工照明の作り出す空々しさに気がつかないのかねぇ。
 夜、雪が止んだ静寂の戸外にそっと踏み出してごらんなさいよ。月がなくたって明るいんですね。こんな真っ白な街を見たことないでしょ。そしてとてもすてきでしょ。

 人工の明かりではこうはいかない。