官から民へ?(1)

 昨夜、仕事が予定より早く終わったので帰り道にある「ブックオフ」に寄った。閉店間際のためか、広い店内には数えるほどの客しかいない。むしろ明日の準備で書棚を整理している店員のほうが多いくらいだ。
 店内に入ると「いらっさいまっせえ!」の大合唱で迎えてくれる。きっと店のマニュアルに「入口のドアが開いたら『いらっさいまっへー!』と言え。」と書いてあるんだろうね。とにかく客に動きがある都度、店中の店員が口々にそう叫ぶ。
 まぁハードなブックオフ利用者であるワシャは慣れっこなのでまったく無視をして本の物色をするのだった。
 基本的にブックオフでは「100円棚」にざっと目を通す。常連なので概ねの本の並びは記憶している。だから順次棚を移りながら前に来た時と違う本が目に触るのでそこだけ確認すればいいのだ。20本ほどある棚を半ばまで確認作業をしていたところ、反対方向から棚の整理をしてきた兄ちゃんとかち当たった。ワシャは興味のある「政治棚」だったのでじっくりと物色している。整理兄ちゃんは何冊かの本を手にしてワシャの横に立ってワシャがどくのを待っている。ワシャとしては次に移りたいのは兄ちゃんが立っている棚なのだが、兄ちゃんはワシャがどくのをひたすら「いらっひゃいまっしぇー!」と怒鳴りながら待っているのだ。いつもなら絶対に動かないワシャなのだが、深夜10時まで何も食していなかったので空腹に負けた。兄ちゃんの立っている棚を飛ばして次へ進んだのだった。
 例えば書店員だったら(ブックオフのアルバイトを書店員とは思わないけれど)客が本を物色しているのを妨げてはいけないし、もし妨げなければならない状況になれば「申しわけありません」とか「失礼します」というような言葉をかけて仕事をすればいい。しかしブックオフの書店員にはそれができない。要するにマニュアルに書かれていること、もしくは店長から言われたこと以外には対応ができないのである。
 市内の公立図書館によく足を運んでいるが、書棚を整理する司書と同様なシチュエーションになることがある。その時、彼らはほとんどの場合、客に進路を譲り別の棚へ移動をするか、あるいは「申しわけありません」と声掛けをして書籍を出し入れする。
(「官から民へ?(2)」に続く)